カリフォルニアの大麻合法化、真っ先に反応するモバイルアプリ

 2016年11月、ちょうどトランプ大統領が誕生した選挙では住民投票も行われ、筆者の住むカリフォルニア州では、娯楽用大麻が合法化された。米国の他の州からは、カリフォルニアに「マリファナホリデー」を楽しみにくる人も増えることが期待される。ヒッピー文化の中心地だったサンフランシスコでマリファナを楽しむことに、意味や価値を見出す人が少なくないからだ。

 ※なお日本の大麻取締法では所持や譲渡が禁止されており、日本人は海外でも日本の法律で処罰されることになっている。

 正直なところ、これまで禁止されていたこと自体が形骸化している、と感じない日はなかった。というのも、筆者の住むバークレーや、近郊では最も都会のサンフランシスコの街中、あるいは周辺地域に充実する自然公園などを歩いていると、マリファナの香りにすぐに出会うことができたからだ。医療目的での使用は認められてきたが、それ以上に拡がっているように感じられた。

 先日友人が、中学生ぐらいの子どもが、家の前でマリファナを吸っていることに気づいたそうだ。そこですぐに警察に連絡したところ、「大人なんだから自分で注意しなさい」とたしなめられたという。

 ちなみに大麻の使用は医療目的であっても18歳以上、娯楽用は21歳以上。合法化されても、公共の場での使用は100ドル程度の罰金とされている。警察が取り締まるコストをかけなくていいように合法化した、とでも言われているような感覚だ。

 合法化以前、マリファナを路上で楽しむ人が一定数いるのと同じように、マリファナの取引も路上で行われている様子を見かけた。別に周囲を気にしている様子でもないが、お互い素早くモノとカネをやりとりして、素早く別れて行く。何となく雰囲気でわかるものだ。

 しかし最近は金銭のやりとりを直接しなくなりつつあるそうだ。VenmoやSquare Cashといった個人間送金アプリが普及したためで、あらかじめお金のやりとりを済ませた上で、モノのやりとりだけを現場で行う、というスタイルへと変化しているからだ。

 ただ、Venmoは注意しなければ送金履歴がニュースフィードのように残ってしまうことから、Appleが導入したiMessageで送金できるApple Pay Cashの方が、よりプライベートを保ちやすいとして重宝されるようになっている。もちろんAppleは、「マリファナの取引に便利」と喧伝することはあり得ないだろうが……。

マリファナもアプリでお届け

 さてマリファナ合法化を境に、サンフランシスコからオークランドやバークレー方面に向かう湾を渡るベイブリッジ沿いの屋外広告に、鮮やかな水色の巨大な看板を目にするようになった。この広告主は「Eaze」という名前のアプリだ。

 この単語の意味は安楽さ、くつろぎ、安らぎ。マリファナを手に入れるためのアプリであることは想像しやすい。また、初心者にもていねいにその使い方について紹介しており、ここでは、医療用としてストレスの軽減や痛みを和らげる目的が紹介されている。

 その他に、クリエイティビティの向上、音楽や映画やゲームへの没入、食事や睡眠、セックスなどの際の利用が挙げられている。どちらかというと機能的な用途が重視されている点も、印象的だ。

 Eazeはアプリで簡単にマリファナ製品を取り寄せられる。ちょうどUber EatsやEAT24のように、食事をデリバリしてもらう感覚。オーダーがあったら、その地域のドライバーがユーザーに20〜30分程度で配達する仕組みを構築している。

 マリファナもアプリからオーダーするような時代がとっくに訪れてしまっているのだ。米国のアプリでは、運転免許証などのフォーマットが決まった身分証明書を読み取るライブラリがアプリ向けにすでに構築されている。そのため、21歳以上であるかどうかの確認や、もし21歳未満の場合は医療用のマリファナの利用書類などをアプリから確認する仕組みが採られる。個人認証や居住地域の確認についても抜かりがない。

アプリによる取引が拡大していくか

 マリファナは日本以外の先進国では医療目的での用途の研究が進み、カフェインよりも依存症状が低いとされているほどだ。一方で長らく禁止されてきた地域も多い。合法化と同時にシェア経済のエコシステムに組み込まれ、アプリから気軽にオーダー出来るようになったカリフォルニアの変わり身の早さには違和感を覚える。

 Eazeのウェブサイトでは、マリファナはカリフォルニアで最も急速に発展している産業であると説明する。実際、既に合法化を進めていたオレゴン州では税収に非常に大きな貢献を果たしており、2014年からの5年間で金額は10億ドルを超えてくるとみられている。こうした急成長は新たな雇用を作り出し、「グリーンラッシュ」と揶揄されるほどだ。

 カリフォルニアでシェア経済と結びついてアプリのデリバリーが行われる背景には、個人の娯楽用マリファナの所持制限が1オンス(28g)までと定められているからだ。つまりアプリを使えば、手元になくなり次第30分以内に追加購入ができ、利用者のニーズを的確に捉えることになる。

 アプリによる販売は、対面販売よりもより多くの人が気軽にアクセスできる可能性を拡げているようにも見えるが、証明書類の正確な確認やカリフォルニア州内という居住地域の確認などを考えると、より厳密な法令遵守を実現する、と捕らえられる。

 米国におけるマリファナに対するイメージの変化とモバイル化による利便性の拡大が同時に起きており、今後どのような社会へのインパクトをもたらすのか注目されるが、モバイルが確実に社会インフラとして作用している様子を、マリファナ合法化でも発見することができるのだ。

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