DMM片桐社長、電撃就任から1年--事業作りで考えるのは「市場と人」

 2017年1月4日にDMM.comの代表取締役に片桐孝憲氏が電撃就任して、ちょうど1年が経った。イラストコミュニティ「pixiv(ピクシブ)」を立ち上げて巨大サービスへと成長させてきた同氏は、事業領域も組織規模も異なるDMMの舵を取る中で、何を感じたのだろうか。また、買取アプリ「CASH(キャッシュ)」を運営するバンクの巨額買収や、仮想通貨事業への進出など、多岐にわたる事業展開にはどのような狙いがあるのだろうか。片桐氏に話を聞いた。


DMM.com代表取締役の片桐孝憲氏

事業作りで考えるのは「市場と人」

――1年前に片桐さんがDMMの社長に電撃就任したことは大きな話題になりましたが、創業者としてサービスを成長させてきたピクシブには未練はなかったのでしょうか。

 こうなっていけばいいなという思いはあるし、ゼロから創業した会社なので思い入れはありますが、未練はないですね。12年間もピクシブをやってきたので、ピクシブをどのような組織にしていけばいいのか、どのような事業展開の可能性があるかといった解像度は今でも高いです。ですが、ピクシブにはとても良いチームができているので、私なしでも新しい展開をどんどん切り開いていってくれるだろうと思っています。たまに相談に乗ることもありますが、あくまで今の現場が動かしているので、現場判断以上のことはしていません。

――DMMの社長に就任して1年が経ちますが、事業のスピード感や意思決定のプロセスでどのような違いを感じましたか。

 DMMは自分が経験したことがないような組織規模が大きな会社ですが、人的にも資金的にもリソースが充分にあるので、何かをしようと思ったときのスピード感は、規模感も含めてむしろ速いと感じましたね。私が新しい事業をやろうというときに考えることは成長市場であるのか、そのマーケットに対して、誰がどんなチームでやればうまくいくのかといったところです。

――DMMは突然、新サービスや既存サービスの新展開などを発表することがよくありますが、フットワーク軽く事業展開するスタイルに何は意図があるのでしょうか。

 そこも意思決定のスピードからくるものなのだと思います。ある程度「これでいこう」という形で話がまとまると、じゃあすぐ発表しようという段取りになる(笑)。

 DMMは多くの事業を展開しているので、亀山会長が見ている事業もあれば私が見ている事業もあるし、他の役員や事業担当者が見ている事業もある。なので、突然発表しているように見えますが、意図してやっていたり何か戦略があってやっているというよりも、各事業が自然体で行っている結果だと思いますね。(買取アプリの)CASHのバンク社を子会社化した時もそうでしたが、事業発表に関しては、スピードやタイミングをとても大事にしています。


買取アプリ「CASH」

――先日、買取アプリ「メルカリNOW」が発表された際に、メルカリの事業担当者はCASHの動向を意識したことを認めています。DMMの意思決定の速さが、他のビッグプレイヤーの意思決定にも影響を与えていますね。

 他社の意思決定が自分たちの意思決定に影響することもあるので結果的にサービスが良くなって、ユーザーが喜ぶならそれでいいと思います。そもそも他社と競争しているというより、二次流通市場というポテンシャルがあるマーケットを自分たちのやり方で作っていければいいと思っています。

――70億円というCASHの買収額はどのように決まったのでしょう。

 バンクCEOの光本勇介さんの提示額そのものですね。それをジャッジして買収を決めました。ただ、これは光本さんを含むメンバーと二次流通市場への“入場料”だと考えています。二次流通市場でビジネスを展開して、成功するためには人材の力が不可欠です。誰がやるかで成功率も変わってくる。最適な人がいるならば一緒にやっていこうという判断ですね。

DMMの風土には「すっかり馴染んだ」

――この1年、社内の組織づくりやコミュニケーションについて取り組んできたことはありますか。また、片桐さんはDMMの風土にもう馴染んでいるのでしょうか。

 社員のみんながどう思っているかは分かりませんが、私自身はDMMの風土にすっかり馴染みましたね(笑)。その上で、開発の体制や開発のプロセスをより良くしていこうと思って、環境づくりも含めて取り組んでいますが、そこは時間をかけて着実に1つ1つやっています。結果的にこの1年では大きく変わっていないと感じている人がほとんどではないかと思います。

 ただ、そもそもDMMの社内に大きな課題があったわけではなく、すでに社員がいい仕事をして成長している企業ですから、それをより良くするという方向性でできることを、時間をかけて取り組んでいくという感じですね。


「社内が変わるのには時間がかかる」と片桐氏

――ピクシブと比較すると、社員数の規模感の違いが大きいのではないかと思います。組織作りにおいて、そうした違いを感じることはありますか。

 DMMには、さまざまな価値観を持った人が集まっているということですね。事業だけでなく社員も多様な才能が集まっていて、年齢、学歴、人種、考え方や環境などさまざまなので、ある1つの価値観や考え方を一方的に押し付けることはできません。

――片桐さんと亀山会長、それぞれが持つ強みについてはどう感じていますか。片桐さんはウェブサービスや開発に明るく、亀山会長はビジネスモデルの構築や交渉力に強みがあるという話をされていたと思います。

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