日本のヘルステック、テーマは医療の質と医療費削減の両立--Health 2.0講演 - (page 2)

「日本のヘルステック業界にはチャンスもある」

 石見氏は「日本のヘルステック業界にはチャンスもある」と言う。日本特有の課題として、石見氏は特に高齢化を挙げる。2030年には65歳以上が日本の人口の3分の1を占め、2060年には2人に1人が高齢者になると説明。同時に、すべての国民を何らかの医療保険に加入させる、世界にもまれに見る「国民皆保険制度」を有し、病院・診療所に行きたいときに行ける「フリーアクセス」、そして医療費の「出来高払い制」を日本の医療の良い点として取り上げた。

 「国民皆保険制度をしっかり守り、医療の質を担保しながら医療費を削減しつつ新しい世界を作る、というのが日本のテーマ。産業としてはポテンシャルがあると言えるが、それを賄うのは税金、という構造になっている」として、石見氏は国の取り組みを2つ紹介した。ひとつは投資、もうひとつは規制緩和である。

日本特有の課題は高齢化だ。2030年には65歳以上が日本の人口の3分の1を占め、2060年には2人に1人が高齢者になるという
日本特有の課題は高齢化だ。2030年には65歳以上が日本の人口の3分の1を占め、2060年には2人に1人が高齢者になるという

 投資に関しては「ヘルステックに対して、かなりお金が流れてきている」と石見氏。「遠隔医療や電子処方箋などICTを使って、政府が規制緩和を進め、そこに民間の参入を促すことで日本の医療を何とか守ろうとしているのが現状」と説明する。

 また、日本のヘルステック業界の近年の流れについて、石見氏は業界マップを示しながら解説。「2010年には遠隔医療については、できないと思われていたのでプレイヤーがいなかったし、ビッグデータの世界もなかった。一方で電子カルテには大きなベンダーがいて、盛んな分野だった。これが2017年になると、あっという間にベンチャーが増えてきている状態。また大企業でヘルステック以外の参入も増えている」と石見氏は言う。

日本におけるヘルステック業界の近年の流れ
日本におけるヘルステック業界の近年の流れ

 この先はどうなるのか。石見氏は「日本は国民皆保険であることから、ビッグデータが取りやすい。またデータを統計的に整備しやすいはず。またモバイルの普及率も高い。これらの分野がよい形で融合していって、日本なりの、産官学が合わさった形のイノベーションが何か生まれるのではないか」と期待する。

 さらにまだ日本ではあまり話題になっていない分野として、ブロックチェーンを石見氏は取り上げた。「米国では非常に注目されているが、日本ではまだプレーヤーが見当たらない状況」として、石見氏も今後の動きに注目しているとした。

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