これまでの相談機関は、電話やメールなどで相談するしかないものが多かった。しかし通話をする機会が減ったため、「電話なんてかけられない」という中高生は少なくない。ある高校生は、「仲間内では、お店の予約などで電話をしなければいけないというだけで選択肢から外すことは普通」という。電話は非常に面倒くさいもので、SNSなどでメッセージを送るだけで済むのが一番というのだ。また、「自分のメールアドレスはよく分からない。メールはほとんど使ったことがない」という子も多い。
これまで当連載でご紹介してきたとおり、10代の子どもたちのメインのミュニケーションツールはSNSだ。特にLINEは、企業アカウントからも「LINEを利用したら若い子からの問い合わせが増えた」と言われている。電話やメールよりも連絡の敷居が低い、10代にとって手軽な連絡手段なのだ。いじめ相談においても、これまで相談できなかった子たちが相談して悩みを解決できる可能性は高いだろう。
SNSは活用の仕方次第で良くも悪くもなる。運営会社には、完全に規制される前に、10代が悪い大人との出会ったり犯罪に巻き込まれることを防ぎつつ、逃げ場となるような対策を急いでほしいと思う。
SNSは10代の子どもたちにとってコミュニケーションインフラだ。10代の子たちはお互いにメールや電話番号は知らず、SNSでつながってやり取りするのが普通だ。10代の子どもたちとコミュニケーションを取りたいならSNSは外せない。同時に、SNSは10代の子たちの居場所となっている。SNSだけでしか言えない本音があったり、SNSでつながっている人たちが心の支えとなっているケースは少なくない。
SNSを単純に規制するのではなく、LINEをいじめ相談のツールとしたように、積極的に活用していくべきだ。保護者も、10代の子どもたちのSNS利用を単純に禁止などせず、どのように使っているのか、危険なことはないのかを対話を通して知ってほしい。そして、暖かく見守ってあげてほしいと思う。
付け加えるなら、今後は“LINE一択”というのも一考の余地があるかもしれない。LINEは圧倒的に使っているユーザーが多いので、現状の相談の場としてはベストと言えるだろう。しかし、最近はどのSNSでつながるかはグループによって異なる。女子高生などは、LINEではなくSNOWやInstagramがメインというグループもあった。10代のSNS利用の実態に合わせて、相談の場となるSNSの対応をしていく必要があるかもしれない。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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