医療ベンチャーのNAM、ICOで100億円の資金調達へ--AIを使った次世代診療とは

 NAMは2017年12月24日から2018年1月31日までの39日間、ICO(イニシャル・コイン・オファリング=仮想通貨技術を使った資金調達)を実施し、国内外から100億円の資金調達を目指すと発表した。

医療の見地を持ったAIのエンジニア集団

 同社は、10月に創業したベンチャー企業だ。NAMの名称は、代表取締役である中野哲平氏の名字を用いたNakano AI Medicalの略という。

 社員15名の研究者・エンジニア集団で、中野氏は2017年に慶應義塾大学医学部を卒業したばかりの25歳だ。2016年、2017年に経産省所轄IPAの未踏事業に事業採択されており、それらの事業を独立して行うプロジェクトという。

事業のステップ
事業のステップ

 ​NAMは、「医療の見地を持った、人工知能に関するエンジニアのプロフェッショナル」と説明する。今後予定している医療業界向けAIサービスの研究開発費用やクリニックの開業に向けた調達のため、2017年12月24日にデジタル権利証であり、主要仮想通貨などと交換可能な「トークン」(NAMコイン)を「1200億NAM」発行、「600億NAM」の販売をウェブサイト上で開始する。現在、ホワイトぺーパーをPDFで公開中だ。

NAM 代表取締役の中野哲平氏
NAM 代表取締役の中野哲平氏

 2017年12月24日から2018年1月31日までの39日間ICOを実施し、NAMコイン購入者に仮想通貨「イーサリアム」を同社のウォレット(仮想通貨を保管する電子財布)に送金してもらうことで資金を調達する。なお、NAMコインは同社が開発した製品の購入や医療サービスの利用にも使用できるという。

 NAMコインは、2018年3月以降に国内外の仮想通貨取引所での取り扱いを目指すという。3年後の売上目標は100億円。

まずはICO(新規仮想通貨公開)で資金調達を目指す
まずはICO(新規仮想通貨公開)で資金調達を目指す

NAMが目指す3つの問題解決

 調達した資金は、AIを利用した問診ボット「ドクターQ」(2018年1月開始)、機械学習を利用した疾患予測モデル「NAMインスペクション」(2018年3月開始)、AIが推薦する健康食品「NAMヘルス」(2018年5月開始)、深層学習とブロックチェーンを使った次世代カルテシステム「NAMカルテ」(2019年1月開始予定)という4つの医療業界向けAIサービスの研究開発費用などに充当するとしている。

3つの問題を解決していく
3つの問題を解決していく
100億円で2020年までに行うこと
100億円で2020年までに行うこと

 NAMは、現在の医療について(1)患者の治療結果をフォローできていない、(2)電子カルテが50%も普及していない、(3)新薬/新検査の承認が世界に4年遅れている──の3つの問題があるとし、それを2020年向けて解決していきたいと説明する。

 患者が病院に行った後、薬を出してもらい、その後再び来院しなければ、医師は「よくなったのではないか」と考える。しかし、必ずしもそうではないと中野氏は指摘する。

 「​特に痛くもかゆくもないものは継続受診率が少ない。​高血圧は40%しか通わない。体が悪くても来ない人が60%いる。糖尿病や脂質異常症など症状がないものは同じような結果。そうして突然脳卒中になったり、透析が必要になったりする。『悪ければ来るでしょう』は間違い。そのせいで日本の医療は圧迫されている」と語った。

 そこで、LINEなどのチャットを用い、「お体はよくなりましたか?」とAIが自動でフォローし、経過が悪い人だけを医師に報告するしくみを計画する。

人工知能がチャットで経過観察する
人工知能がチャットで経過観察する

 患者が別の病院に行きたいと考えたとき、電子カルテが普及していないためムダに検査を重ねることがあると指摘する。また現在の電子カルテは使い勝手が悪いとし、ブロックチェーンを使用した電子カルテを無料で提供するとしている。

 新薬/新検査の承認が世界に4年遅れている点について、「国の承認を早めるのは不可能。でも、(海外で認められている)いい薬がたくさんある」(中野氏)とし、2018年3月をめどに医療AIサービスを受診できる医療法人「NAM AI クリニック」を東京・銀座に開業する。

 NAM AI クリニックは保険診療ではないため、どこの病院でも出す普通の薬を提供することはないという。また、疾患のリスクがわかるゲノム検査も提供する予定だ。銀座以外にも、通常の保険診療を行うクリニックと提携し、併設する形でNAM AIクリニックを100店舗まで増やしたい考えだ。

NAM AIクリニックの3つの特長
NAM AIクリニックの3つの特長

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]