日本商品に特化した中国越境ECプラットフォーム「豌豆公主(ワンドウ)プラットフォーム」を運営するInagora(インアゴーラ)は11月22日、伊藤忠商事、KDDI、SBIホールディングスから約76億5000万円の資金を調達したことを発表した。同社の累計調達額は123億5000万円となる。また、日中間の新たな商品流通システムを構築することも発表した。
Inagoraは、キングソフト会長の翁永飆氏らが2014年12月に設立した企業。同社が運営するワンドウは、中国ユーザー向けの商品の翻訳、物流、決済、マーケティング、顧客対応など、中国越境ECで必要な全工程を、Inagoraが担うプラットフォームだ。日本企業はInagoraの日本国内の倉庫に商品を送るだけで、同社の物流網によって中国の消費者に届けることができる。また、100以上の中国人気SNSやインフルエンサーと連携して、情報を拡散できることも特徴だ。
翁氏によれば、2015年8月にリリースした中国消費者向けの越境ECアプリ「豌豆公主(ワンドウ)」は300万ダウンロードを突破。また、P&Gや日清食品、コーセー、EDWINなど約2600ブランド、約4万の商品を取り扱っている。期首期末対比の月間流通総額は、2016年と2017年の2年連続で10倍以上の成長を記録しているという。2018年には500億円、2020年には1800億円規模を目指す。
今回調達した資金は、技術やマーケティング、物流などの人員増強や、物流拠点の拡充、シンガポールや香港など東南アジアへの事業展開に向けたシステム開発とマーケティング強化に充てるとしている。
また、顧客企業のサポート体制も強化する。ヘルス&ビューティ、食品、家電、ファッションなど、カテゴリごとにプロフェッショナルが日本のメーカーをサポートするという。各カテゴリの責任者には、前職でアマゾンや楽天、アリババなどで重要なポジションに就いていたメンバーを起用しているとアピールした。
出資先の伊藤忠商事とは戦略的な資本業務提携をし、Inagoraの持つ中国におけるネットワークと、伊藤忠商事の国内外のメーカーとのつながりや物流リソースを掛け合わせるという。
同日の記者発表会で登壇した、伊藤忠商事代表取締役 専務執行役員 情報・金融カンパニープレジデントの鈴木善久氏は、「今回のラウンドで(伊藤忠商事は)42.5億円を出資する。Inagoraの持つ中国の消費者目線に立った非常に緻密なビジネスモデルと、伊藤忠グループの持つ総合力。これを組み合わせることで、日中をつなぐ最強のECプラットフォームを作りたい」とコメント。翁氏は過去に伊藤忠商事の社員だったことから、「誇りに思うと同時に、親元として責任を持って全力で支える」と意気込んだ。
同じくInagoraに出資したKDDIとの連携も発表。KDDIのECサービス「Wowma!(ワウマ)」と共同で、日本国内のEC事業に本格参入する。ワンドウプラットフォームの出店者は、Wowma!内に新たに出店される「WONDERFULL」ストアを通じて国内EC展開が可能になる。また、中国と日本の市場に同時進出できる「中国越境・国内ECワンストップソリューション」を、Wowma!とワンドウプラットフォームの出店者に提供するという。さらに、Inagoraはauの物販サービス「au WALLET Market」において、商品の仕入れ力の強化や効率化を進めるとしている。
KDDI執行役員 ライフデザイン事業本部長の森田圭氏は、Inagoraと組む狙いとして、(1)Wowma!加盟店の越境市場への新規参入のサポート、(2)Wowma!やau WALLET Marketなど同社の国内EC事業の商品ラインアップの拡充を挙げ、加盟店や消費者の満足度を高めたいと語った。
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