C-C4ISRでできることを簡単に説明すると、たとえば都市内に無数に設置された「デバイス」から得た動画、音声、センシングデータを、「パイプ」を通じて「クラウド」に送信。複数の組織・部門と共有したうえで、犯罪の防止から復旧までの各ステップの高精度化、迅速化が図れるとしている。
具体的に頭にCが付く「C4」で同社が可能にしていることを挙げよう。まず「C-Command/C-Control」では、たとえば警察、消防・救急、海上事故というように、日本では主に3つある緊急通報を1つの窓口(電話番号)に集約することが可能になる。
これは単に、技術的に電話番号を1つにできるという意味ではない。多様なセンサを備えるスマートフォンを利用するなどした通報システム自体の整備により、通報者自身の状況を短時間で把握できるようにする。さらに通報を受けた行政側でも密な情報共有をすることで、適切な部門と連携をとったうえで適切な人員を最短時間で派遣できることを意味している。
国によっては緊急通報用の電話番号が5つ以上あるところもあり、それを可能な限り少なくすることで、通報者がどの番号にかけるべきか、悩まずに済むというメリットもあるだろう。
また、「C-Communication」の面では、無線通信プロトコルの統一が可能となる。警察組織などが使用する無線機器の通信プロトコルは国によって異なるが、現在は主に帯域の狭い(通信速度の遅い)「TETRA」や「P25」といった方式が用いられている。しかしながら、犯罪の高度化が進む昨今、音声のやり取りにしか用いられなかった無線機器を、写真や動画も送受信可能なものにして、より効率的な「探知」や「対応」に活用したいというニーズが増えているのだという。
そのため、昨今はこれらをLTEをベースとする通信プロトコルに置き換えることがトレンドとなっている。米国の一部ではP25を「FirstNet」と呼ばれるものに、英国ではTETRAを「E.S.N」と呼ばれるものに、それぞれ切り替えたとコー氏は説明。ファーウェイは「enterprise LTE(eLTE)」というセキュリティに優れたエンタープライズ向け広帯域通信技術を保有しており、実際に中国の一部で導入した際には、それまで1人の警察官が4つの無線機器を携帯していたところを、1つに統一できたという。
同社のC-C4ISRソリューションは、組織内のすべての業務を細かくサポートする各種サービスやツールを含んでいるわけではない。たとえばSales ForceのようなCRMソリューション、SAPのERPパッケージなど、組織内で以前から使用しているシステムはそのまま使うことになる。
ただし、C-C4ISRではそうしたシステムを提供する多くのサプライヤーとパートナーシップを結び、100以上のシステムと連携することで独自のエコシステムを形成している。
コー氏は近い将来、ファーウェイやそのパートナー企業とのパートナーシップやコラボレーションを促進する、中小企業向けのオープンラボを日本国内に開設する計画があることも明らかにした。「我々はケーキ(利益)を分割するのではなく、大きくする方針。エコシステムを大きくすることが望みであり、できるだけ多くのパートナーとやっていきたい」と話す。
今回、コー氏が来日する直前、ラスベガスで痛ましい銃乱射事件が発生した。インタビュー時点ではまだ詳細が明らかになっていなかったため、具体的にどのような防止対策が有効かは言及しにくいとしながらも、同氏はあくまで私見として「ラスベガスでは警察がP25の無線を使用していると思われる。そのせいで組織間、部門間のコミュニケーションが十分に取れていない可能性はある」と指摘した。
というのも、2016年に米フロリダ州で発生し49人が死亡した銃乱射事件が、ラスベガスと似たような状況だったからだ。「フロリダの事件では、事前にテロリストが大量の銃を入手したことがわかっていたが、防げなかった。他の組織と十分に情報の共有、コミュニケーションができていないのが原因の1つだった。こうした犯罪の防止には、異なる部門間の連携が不可欠となる」と、同氏はコミュニケーションの重要性を改めて強調した。
銃の所持が禁止されている日本では、このような銃乱射事件は発生しにくいだろうと同氏は見る。しかし、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのようなビッグイベントはターゲットになりやすいとも警告する。「世界中から人が集まるため、狙われやすくなる。これはもはや自然災害みたいなもの。日本は他国が治安維持のため参考にした交番システムなどがあり安全だが、脅威は進化している。我々のC-C4ISRは日本にとっても重要になるものと信じている」と、ファーウェイのソリューションをアピールした。
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