「HOW」から「WHAT」へ--シャープ戴社長が示した新たな幕開け

 シャープの代表取締役社長である戴正呉氏は10月10日、社内イントラネットを通じて、社員に対して「いよいよ幕明け、『8K World & AIoT World』」と題したメッセージを配信した。

シャープにはAIやIoTの先行企業を超えるだけのポテンシャルがある


シャープの代表取締役社長である戴正呉氏

 10月から2017年度下期に入ったこと、10月6日に「CEATEC JAPAN 2017」が閉幕したタイミングでのメッセージとなり、冒頭戴社長は「上期の業績は現在集計中だが、順調な着地ができる見通しであり、2017年度のテーマである事業拡大が着実に進んでいる。半年間の努力に心より感謝する。下期もこの流れを止めることなく、全社員が一致団結し、5月に公表した通期業績予想を必ず達成しよう」と呼びかけた。

 最初に言及したのが、「CEATEC JAPAN 2017」である。「当社は、『8K World & AIoT World』をテーマに、3つのステージと4つの体験ゾーンによる展示を行い、シャープが目指す『人に寄り添うIoT』、『8Kエコシステム』を来場者に体験してもらった。来場者からは、『非常にわかりやすい展示でAIoTの価値が理解できた』、『AQUOS 8Kの臨場感に驚いた』などと好評だった。また、開催前日に行った記者会見には、33社63人のメディアが出席し、超高精細ディスプレイを活用した近未来手術を実現する8K内視鏡システムなど、8Kエコシステムの具体的な取り組みや、AIoT関連サービスの『COCORO+』ブランドへの統合、機器やサービスの拡充、AIoTプラットフォームの外販強化などについて紹介した。会見後にブースを取材した記者からは、『8KエコシステムとAIoTへの本気度を感じた』、『8Kの医療展開は新市場の創出と拡大が期待できる』、『ここ数週間で行われた一連の新製品やサービスの発表に続いて、AIoTプラットフォームに言及するなど、分厚く取り組んでいる印象を受けた』など、ポジティブなコメントをもらった」とした。


CEATEC JAPAN 2017のシャープブース

 また、CEATEC AWARD 2017で、AQUOS 8Kが「ホーム&ライフスタイル・イノベーション部門」でグランプリを獲得したことや、4つの製品などが「2017年度グッドデザイン賞」を受賞したこと、近々発表するビジネスソリューション関連の新製品も同じく受賞が決定していることに触れ、「このように、シャープに対する世の中の注目や評価は益々高まっている。この機会を逃さず、事業拡大の勢いをさらに加速しよう」と述べた。

 さらに、10月14日に実施を予定している勉強会では、CEATECをテーマに、良かった点や反省点を共有すること、AIやIoTに関する他社の商品や技術、トレンドについて研究し、今後、当社のAIoT戦略をより一層ブラッシュアップする予定であることなどに触れた。

 「世の中には、AIやIoTの分野で先行する企業がいくつもあるが、シャープには、このような企業を超えるだけのポテンシャルがあると私は信じている。全員で知恵を絞り、シャープならではの『AIoT World』を実現しよう」と呼びかけた。

 2つめのテーマが、「グローバル事業拡大に向けた取り組み」である。戴社長は、夏季休暇以降、中国、台湾、欧州の訪問に続き、その後もASEAN拠点を視察し、これまでに11カ国を訪問したことに言及し、「この海外出張を通じて感じたこと」として、3つの観点から触れた。

12月発売の「AQUOS 8K」が8Kの起爆剤になる

 最初が「マーケティング力、ブランド力の強化」である。「シャープは、長年にわたり、日本を中心に、マーケティングノウハウを培ってきたが、海外への横展開はまだまだである。ASEANの拠点を視察した際も、店頭で当社製品の展示が目立たない、展示什器のSHARPロゴやプラズマクラスターのマークなどが小さく、お客様の目に入りづらいといった、改善すべき点が多くあった。また、ブランドという観点では、規定と異なる色や形をしたSHARPロゴの使用、国によってばらばらのホームページのイメージなど、シャープとしての統一感が打ち出せていない。シャープが事業活動を行う上で、ブランドは極めて重要であり、今後、大きく発展するためには、改めてグローバルでブランド戦略を見直す必要がある」と指摘。

 続けて「9月29日には、新生シャープとして初めての試みとなる『マーケティング関係者交流会議』を開催し、商品事業本部とグローバル各拠点のマーケティング部門や広報部門の責任者など、100名人以上が出席した。会議では、各地域の店頭展示事例やテレビCMをはじめとしたマーケティング施策を共有するとともに、シャープブランドをグローバルで一段と輝かせるために、より良いブランドスタイルガイドラインの構築に向け議論し、今後、具体的な見直しを行うことを確認した。“One SHARP”で事業拡大に欠かすことのできないマーケティング力、ブランド力を強化しよう」と述べた。

 2つめのテーマが「販路拡大」である。台湾におけるシャープのオフィスソリューション事業の総代理店である携帯電話販売会社のAurora Telecomに、台湾販売会社のSTEから33%の出資を行い、台湾全土の148の店舗を通じて、家電製品の販売を開始することを紹介。「今回のような家電製品の販売拡大を目的とした投資は初めてである。今後も海外を中心に、販路投資だけでなく、これまでにない積極的に新たな取り組みをしていく」とした。

 3つめのテーマが「グローバル人材の育成」だ。前回のメッセージでは海外拠点での英語による会議の実施などにも言及したが、「グローバル人材育成の一環として、今後、優秀な若手社員を海外拠点に派遣する取り組みも行う」とした。

 戴社長は「これまで、海外出向者を出張ベースに切り替えたり、経営の現地化を進めたりしている方針に変わりはない」としながらも、「シャープがグローバルに事業を拡大し続けるためには、グローバル市場で真に戦える人材を数多く育成することが急務である。海外拠点には、英語が堪能で、グローバルな視点や感覚を持つナショナルスタッフが多数いる。日本人スタッフもこうした能力を身につけ、レベルアップしてほしい」と要望。「具体的な仕組みは今後検討するが、アジアや中国だけでなく、これから重要性が高まる欧州や米州への派遣も積極的に行うなど、優秀な若手社員に対して、トレーニングの機会を数多く作っていきたいと考えている。期待してほしい」とした。

 また、戴社長は、放送衛星「BSAT-4a」の打ち上げにも触れた。BSAT-4aは、4Kおよび8Kの実用放送に対応する新しい放送衛星で、9月30日に、南米のフランス領ギアナより打ち上げられた。

 「これは8Kビジネスの前進に向けた大きな一歩である。今後も、8Kに関わるさまざまなパートナーとともに歩みを進め、『8K World』を実現していきたい」としたほか、「この歩みを加速させる起爆剤となるのが、12月1日に日本で発売を予定しているAQUOS 8Kである。10月2日に予約受付を開始したが、予想を上回る手応えを感じている。デビューまで残り約2カ月であり、綿密に組み立てたプロモーション計画を着実に実行し、万全の準備で当日を迎えよう」と語った。

 最後に触れたのが、9月29日に開催した経営幹部による勉強会において、佐藤文昭氏の著書「日本の電機産業 失敗の教訓」を題材に、将来に向けたシャープの変革の方向性について議論したことだった。

 戴社長は、「私たちが携わるのは、電機産業のなかでも、市場や技術の変化、製品やサービスの進化がとくに早い分野である。同書によると、このような産業のなかで日本企業が勝ち残るには、『長期的なビジョンを持つこと』、『ビジネスモデルを変革すること』、『グローバル視点を持つこと』、『変化に機敏に、そして柔軟に対応できる企業文化を創ること』、『自前主義にこだわらず、アイデアや技術、サービスを広く外から取り入れること』などが重要とされており、これは、2016年8月に徹底したシャープの経営基本方針にも通じるところがある」とし、「とくに、日本の総合電機メーカーは、過去から、『HOW』(どうすればいいのかを考える力)に長けており、微細化や省エネ化、大容量化などに強みを発揮してきた。一方、これからは『WHAT』(何をすればいいのかを考える力)がより重要になる。もちろん、WHATだけでは、具体的な形にすることはできない。WHATとHOWの両方を身につけてこそ、新たな市場を創出し、利益を得られる」と総括。「皆さん一人ひとりがこうした意識を強く持ち、シャープ成長の原動力となっていただきたい」と締めくくった。

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