日本国内のメーカー・販売事業者向けに米国のECサイト「eBay.com」を通じて越境ECを支援しているイーベイ・ジャパンはこのほど、国内のエンジニア・デベロッパーを対象としたイベント「eBay Connect Japan 2017」を開催した。
このイベントは、米国、イスラエル、英国、オーストラリア、中国、日本の6都市で開催されているもの。eBay.comがグローバルで展開しているAPIによるオープン戦略についてプレゼンテーションしたほか、エンジニア・デベロッパーがeBayの開発スタッフと交流した。
eBay.comは、1995年の創業から20年余りで190カ国にビジネスを展開し、1億7000万人が利用するマーケットプレイスにまで成長した。最近ではAPIの公開によるオープン戦略を積極的に推進しており、販売者向けAPIでは8億点以上の新規出品が生まれ、42億ドル以上の流通額を達成しているという。
こうしたオープン戦略について、日本市場ではどのような展開を目指しているのか。また新たなテクノロジが次々と生まれる中で、eBayはどのような顧客体験の創出を目指しているのか。このイベントのために来日した米国eBayのデベロッパープログラム・ディレクターであるルチカ・ジャラーニ氏に話を聞いた。
――eBayが日本国内でエンジニア・デベロッパーを対象としたオープン戦略を展開する狙いについて教えてください。
eBayにとってAPAC(アジア太平洋地域)市場は非常に重要であり、中でも日本市場は越境ECビジネスをグローバル規模に拡大していく上で特に重要だと考えています。この狙いのもと、私たちはさまざまなAPIを公開してオープン化を進めていますが、特に日本は製品やサービスに対して高いクオリティを追求する国のひとつなので、このAPIをブラッシュアップするために最適な市場です。ここで日本のエンジニア・デベロッパーに認められれば世界で展開しても十分にやっていけると思っています。
また、今後もさまざまな機能をAPIでオープン化していく予定ですが、特に日本ではeBay.com(英語版)でのショッピング体験をサイトに組み込める「Buy API」の導入も促進していきたいと考えています。
――eBayは現在、日本の商品を世界へ発信してビジネスを生み出すインバウンドの越境ECを推進していますが、この戦略におけるAPI展開の位置づけを教えてください。
私たちは商品購入のためのユーザー体験をオープン化した「Buy API」、商品販売機能をオープン化した「Sell API」、そして「Commerce API」という3つのAPI群を展開しています。日本市場におけるeBayのプレゼンスは決して高いとは言えず、現状はeBay.comでの顧客体験を提供するのに留まっています。しかし、今後こうしたAPIを日本市場に投入することで、日本からの出品希望者がよりビジネスを効率化したり、eBay.comに出品されている膨大な商品を日本のユーザー向けに販売したりできる機会を創出できるのではないかと考えています。
――かつてeBayが日本語サイトで日本市場向けにビジネスを展開していたとき(2000年から2002年)とは環境が大きく異なります。今では多くの日本人が海外のECサイトやクラウドファンディングを通じて海外の商品を購入しています。Buy APIの日本への展開は、こうしたコマースのボーダーレス化が進む中で、日本のユーザーによる海外商品の購入を効率化させたいという狙いがあるのでしょうか。
私たちは、販売企業に対する越境ECの支援、そして世界中のeBayが展開している商品を日本のユーザーに購入してもらえる機会の創出、この両方を同じように積極的にやっていきたいと考えています。また購入機会の創出に関しては、たとえば日本ローカルの支払い方法や商品配送手段に合わせたサービスの提供なども検討しています。
Buy APIは、商品検索、商品情報の詳細、購入体験のすべてをオープン化したAPIになります。CEOのデヴィン・ウェニグは「コマースはeBayに閉じるのではなく、ソーシャルメディアやさまざまなプラットフォームに広がっていくべきだ」と語っており、グローバルでこのAPI戦略を推進していきたいと考えています。
――コマースの世界でもボーダーレス化、クロスボーダー化が進む中で、eBayにとって日本が非常に重要な市場であるということですね。特にこうした動きは、越境ビジネスを展開したい日本の販売事業者にとって大きなチャンスになると思います。
eBayではこれからも日本法人を通じた販売事業者のサポートや、今回のような技術カンファレンスの開催などを通じて越境ビジネスを積極的に支援していきます。一方で、APIを日本のエンジニアやデベロッパーに積極的に活用してもらうことを通じて、これからのイノベーションを共創していければと考えています。米国ではなかなか日本市場の細かい部分まで伺い知ることはできませんが、日本法人との連携やAPIを利用するエンジニア・デベロッパーからの声を取り組むことで、そこで得られたフィードバックをeBayのサービス開発に積極的に取り込んでいきたいと思います。
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