シェアリングエコノミーが紡ぎ出す未来の暮らし--WeWorkのCEOも登壇

 オフィスや住居など“暮らし”にまつわる事業を手がける事業者と、暮らしの課題をテクノロジで解決しようとしている事業者が集った「LIVINGTECH Conference2017」が9月20日に開催された。シェアリングエコノミーやスペースデザイン、クラウドファンディングなどのセッションに約200名が参加した。

 LIVINGTECH Conference2017は、企業や業種の壁を取り払い、暮らしに携わる事業者がコミュニケーションすることで、新規事業や事業提携などが生まれることを目的としたイベント。10〜18時30分まで、計9つのセッションが開かれた。


左から、スペースマーケット代表取締役の重松大輔氏、グローバルエージェンツの代表取締役山崎剛氏、and factory 代表取締役CEOの小原崇幹氏、WeWork JapanのCEOであるChris Hill氏が登壇

 シェアリングエコノミーをテーマにした「空間を活用した新たな価値観や収益機会の創出」では、7月に設立を発表したWeWork JapanのCEOであるChris Hill氏のほか、and factory代表取締役CEOの小原崇幹氏、グローバルエージェンツの代表取締役山崎剛氏が登壇。スペースマーケット代表取締役の重松大輔氏がモデレータを務め、シェアリングエコノミーの可能性などについて話した。

 WeWorkはコワーキングスペース、and factoryはIoTホテル、グローバルエージェンツはソーシャルアパートメント、スペースマーケットはレンタルスペースをそれぞれ提供している。


グローバルエージェンツの代表取締役山崎剛氏

 グローバルエージェンツの山崎氏は「シェアリングエコノミーというと、ミレニアム世代がよく使うサービスというイメージが付いている。ミレニアム世代より上の世代が所有、下の世代がシェアとメディアなどでは言われているがそれは本質ではないと思っている。ミレニアム世代の特徴は合理的な考え方をするところ。所有すべきものは所有して、シェアするものはシェアする。考えて選択していける世代」とユーザー像を説明。「シェアすることによって、タッチポイントが生まれ、コミュニティが生まれやすくなる」とシェアリングエコノミーのメリットを話した。


WeWork JapanのCEOであるChris Hill氏

 日本市場の開拓に乗り出すWeWorkは「私たちが提供しているのはコワーキングスペースではなく、世界最大のメンバー数を誇るコミュニティ。専用アプリは、人と空間をつなげるパスポートの役割を果たす。東京でメンバーになってもらえれば、世界中の会議室やイベントスペースをアプリ1つで使っていただける」と、コミュニティスペースとしての位置付けを強調。会員数は毎月2万人ペースで増えており、現在17万人であることも明かした。

 スペースマーケットの重松氏は、自宅を貸し出している人が1日3件くらい予約が入っている、海の前にある実家がバーベキュー会場として人気になっているなどの具体例を挙げ、「新しい稼ぎ方が出てきているところに面白さと未来を感じる」とシェアリングビジネスの現状を話した。

オープン・イノベーションこそワークスペースの未来

 一方でシェアリングビジネスに関するハードルについても語られた。山崎氏は「いろんな課題があるが法規制は大きい。住居、寄宿舎、宿泊施設などの垣根が低くなっていることに比べ、その垣根を飛び越えるには何かしらの制約が出てくる」とコメントした。


and factory代表取締役CEOの小原崇幹氏

 一部屋で10〜12の異なるメーカーのデバイスを連携し動かしているIoTホテルを運営する小原氏は「通信規格など統一化できていないところが多い。現在使っているのは異なるメーカーの機器のAPIを開放していただき、自分たちでつないで実現している。すべてのメーカーをつなげて使えないのはもったいない」と規格統一を訴えた。

 「課題は戦術、社会環境の2つ」としたHill氏は、「戦術的課題は、すでに多くの問い合わせをいただいており、需要に合った空間を提供できるかといううれしい悲鳴をあげていること(笑)。一方、社会環境の課題は、日本の終身雇用制度。40年も同じ会社で働き、自分の夢をあまり追わなかった人たちもいる。最近は若年層を中心に夢を掴み取るような働き方もする人が出てきているが、若い世代ではなく、すべての人が夢をかなえるような働き方を出来るようになって欲しい」と、働き方の形を提案した。


スペースマーケット代表取締役の重松大輔氏

 重松氏は「働く、遊ぶ、住むなどの境界線が曖昧になっているが、不動産業界はきっちり分けたがる。境目が曖昧になるとセキュリティが心配などの意見が出てくる。しかしセキュリティの問題は、スマートロックや監視カメラなどIoTで今はぜんぶ解決できる。テクノロジを駆使したほうが絶対にリスクは低減される。テクノロジを積極的に取り込まない日本は、ほかの国とすごく違うと感じる」と日本の現状を話した。

 今後のビジネスについては、山崎氏が「ソーシャルアパートメントは、単に住むだけではなく、交流という新しい価値を加えた提案。それに加えてホテルも運営している。泊まるだけではなく、現地の人と交流ができるなど、ユーザーに体験を提供していきたい。またホテルのラウンジをワークスペースとして使うことも取り組んでいる」とコメント。

 小原氏は「IoTホテルでは、IoTデバイスのテストマーケティングとして使っていこうと思っている。例えば、洗濯機や掃除機は家電と言われているが、衣服についた皮脂や油分を分析したり、吸い取ったホコリからハウスダストを検知したりするなど、医療機器としての開発も進められている。そうした研究やプロダクトの開発にも取り組んでいきたい」と新たな展開を話した。

 Hill氏は「ワークスペースはイノベーションを生み出さなければいけないところ。大企業とスタートアップが同じスペースで一緒に働くことで、小さな企業が大企業のリソースを使えたり、大企業がスタートアップのアイデアをもらったりすることで、新しいサービスや製品が生まれる。オープン・イノベーションこそワークスペースの未来と考える」とWeWorkが考えるワークスペースのあり方を示した。

 重松氏は「インターネット登場から20年、iPhoneが生まれて10年が立った。次の10年で何がくるか?個人的にはチャレンジできる選択肢が増える時代になると考えている。それを支えるのがテクノロジ。やる気がある人は地方にいても、無名であってもなんでもチャレンジできるような世の中になってくる。シェアリングエコノミーが本格化していけば、チャレンジができる、本当に豊かな国になると信じている」と締めた。

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