ファッションとAI――。かけ離れた世界とも言えるジャンルのコラボレーションが実現したのは、東京ガールズコレクションからの提案だったと日本IBMの執行役員でワトソン事業部長の吉崎敏文氏が明かした。
コグニティブドレスは2016年5月にニューヨークのメトロポリタン美術館(MET)で開催されたパーティーイベント「Met Gala 2016」で披露されている。ドレスに施された150ものLEDが人々の感情によって色を変化させた。ファッションとテクノロジの融合が東京ガールズコレクションのスタッフの目に止まったという。
吉崎氏は、「リアルでライブを見ていたが、最初はAIに戸惑っていた人たちが徐々に受け入れ、ドレスがピンク色(喜び)に変わった。ITはコンピュータ言語を使うなど難しいと敬遠されがちだが、Watsonは皆さんが普通の言葉でつぶやいた感情を即座に分析して周囲に見せることができる。AIを身近な存在として感じていただける機会になった」と語った。
今回、専用のハッシュタグで投稿されたツイートは800件。その解析結果を8秒単位で区切り、LEDの色で表した。「今回の反応はWatsonに蓄積され、次回への布石となる。この知見を東京ガールズコレクションのマーケティングや新たなイベントに活用してもらいたいと考えている」(吉崎氏)
吉崎氏はAIが人間をサポートする活用シーンの多さを日々感じているという。「非構造化データである話し言葉をWatsonに解析させることは、人間のクリエイティブに非常に役立つ。アメリカでは解析結果を音楽にも利用している。どのトーンが最も心地よく感じられるか、どんなリズムや音階が受け入れられやすいのかを判断できる」
吉崎氏はまたWatsonについて「コールセンターでの活用も進んでいる。WatsonにはPersonal Insightsというパーソナライズされた対話を可能にするAPIもあり、Tone Analyzerと組み合わせることで、例えば電話がつながらずに苛立った客の感情を判断して最適な対応を施せる」と説明した。
「Watsonは映像や画像の解析も可能だ。1時間半の映画の中でどのシーンでどんな反応を得られたかも解析できる。海外ブランドのバッグが正規品かどうかも、正規品と偽物の両方の画像をディープラーニング(機械学習)させることで真贋を判断する。査定する人の技術レベルに左右されない判定を可能にしている」(吉崎氏)
AIといえば、LINEの「WAVE」や「Google Home」、「Amazon Echo」などAIスピーカーの話題が花盛りだ。しかし、現在販売されている日本語対応AIスピーカーはWAVEのみ。日本語だけでなく10カ国語を解析できるWatsonの音声認識に期待が高まる。一般家庭にWatsonが活用される日は近いのかもしれない。
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