富士通研究所は7月31日、The Linux Foundationが主催するHyperledgerのブロックチェーンフレームワークの一つ「Hyperledger Fabric」において、トランザクション処理を高速化する技術を開発したと発表した。
ブロックチェーンは、中央集権的な管理者を持たずに、高い透明性と信頼性を担保しつつ、耐改ざん性に優れたシステムを実現する技術。金融分野をはじめとするさまざまな分野での利用が期待されている。同社によると、Hyperledger Fabricは、堅牢な商取引プラットフォームを構築するブロックチェーンとして注目されているという。
ブロックチェーンでは、参加者数に応じたノード群がネットワークを形成し、取引処理の実行や取引の正当性の検証といった一連の処理をネットワークを介して進むため、従来の集中管理型のシステムに比べて、ネットワークを介した通信の影響により単位時間あたりに実行できる取引の数が制限される。このため、オンライン取引システムへの適用が課題となっていた。
同研究所では、独自の解析技術により、日本国内の複数拠点でコンソーシアム型ブロックチェーンを運用するケースなど、64ミリセカンド程度の応答時間が必要となるネットワーク状況下において、取引処理におけるアプリケーションとブロックチェーン基盤との間の通信が主要なボトルネック要因だと判明。
そこで、アプリケーションとブロックチェーン基盤との間の通信回数を削減することでトランザクション処理を高速化する「データの差分更新(DUS: Differential Update State)機能」と「一括更新(CR: Compound Request)機能」の2つの技術を開発した。
データの差分更新機能は、指示したデータに対する差分演算のみをブロックチェーン基盤上で一括処理し、通信回数に直結する演算数を削減する機能。一括更新機能は、ブロックチェーン基盤に対して複数の処理をまとめて送付し、一括で実行する。ブロックチェーン基盤上での処理を効率化するとともに通信回数を削減し、まとめた処理に部分的なエラーが発生した場合には、一括実行した起点に巻き戻し、再処理することで精度を保つ。
同技術を、「Hyperledger Fabric v0.6.1」に実装。4台のサーバから構成されるブロックチェーン基盤にて取引性能の測定したところ、従来方式では毎秒約500取引だったのが、約2.7倍となる毎秒約1350取引を実現した。これにより、金融機関のように毎秒1000取引を超えるような高い性能が要求されるオンライン取引システムでも、Hyperledger Fabricフレームワークが適用できるようになる。
富士通研究所では、Hyperledger Fabricフレームワークの最新版に対応しながら、さらなる高速化技術の開発を進めるとともに、同技術の業務適用を想定した検証を進め、2017年度中に富士通での製品化を計画している。
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