マネーフォワード勝訴に対してfreeeは何を思うのか--佐々木代表に聞く - (page 2)

――マネーフォワードの言い分では、反論に対するfreee側の明確な反論がなかったこと、証拠もGUIの入力と出力だけの画面キャプチャだったとしています。この部分には、きちんと証拠もあり、反論できる材料(特許)も持っていたと。

桑名氏 こちらとしては、証拠に十分な資料を用意しておりました。それは被告の代理人としての立場としての発言だと考えています。

 マネーフォワードでは、同社が持つ書類を裁判所が文書請求する必要があるか審議する、インカメラ手続きに関する言及がありました。実際、マネーフォワードが持つ社内資料の内容はわかりませんが、文書にクリティカルなことが書かれてあれば、侵害が認められるわけです。証拠機能がまったく無いものとして提出したつもりはありません。

 我々が認識している経緯としては、9月28日付で警告書を送付していましたが、マネーフォワードは、弊社が設定した回答期限を過ぎた10月19日に書面で回答しています。その後、10月21日に裁判所に訴状を提出し、11月1日に送達しています。先方の代理人弁護士の上山先生が指摘するように、訴状の作成準備に1カ月程度要するのが通常だとしても、それは警告書を提出した時点を基準にするのが一般的であり、期限を過ぎて提出された回答のタイミングを基準とするのは適切ではないと考えています。

 我々が警告書を作成する段階できちんと情報収集していることなどを踏まえると、警告書の送付から1カ月というのは、我々としては十分な期間を持って、訴状を作成し、訴訟を提起したと認識しています。また、警告書を送付した段階で、次の手段を検討するのが通常です。今回の場合、しっかり期間を設けつつも、期限内にマネーフォワード側から回答がなかった時点で、弊社としては次の対応の検討に移りました。

――一般的な提訴に至るまでの手順は踏んでいるということですね。控訴は検討していますか。

佐々木氏 検討中です。

――ちなみに、freeeが上場に向けて準備しているという話もあります。それと今回の件は関連しているのでしょうか。

佐々木氏 まったく関係ありません。上場準備という観点では、ベンチャーキャピタルからの出資も受けていますし、どこかのタイミングでイグジットは考えなければいけません。我々のビジネス規模もそれなりのサイズが出てきましたので、検討すべきことではあります。ただし、どちらかというと事業を作っていくことを優先しており、あまりIPOを急ぐ会社ではありません。そういう意味では、今回の件と上場準備が関係しているかというと、まったく関連のない動きです。

 あくまでも、2016年8月にマネーフォワードが自動仕訳の機能をリリースし、それについて調査した上で9月に警告書を送ったという流れです。

――クラウド会計ソフトについては、プレーヤーも多く競争が激しくなっていますが、特許戦略は今後も重視していくのでしょうか。

佐々木氏 特許戦略を重視するというよりは「独自技術を重視する」ことになります。きちんと独自に技術を作っていくことを重視しています。ですので、何でもかんでも特許を取得して守ろうとするのではなく、事業やプロダクトのコアになる部分について、ビジネス全体で考えたときに重要だと思ったことに関しては、しっかり取り組んでいくというシンプルなことです。

桑名氏 freeeは技術を独占しようとしているわけではありません。API開放も早くから取り組んでいます。

佐々木氏 会計ソフトで多分、初めてAPIを公開した会社です。freeeのプラットフォームを自由に使っていただき、さまざまな企業との連携や、お互いに技術を持ち寄ってイノベーションを起こしていこうというのは当初からやっています。

 今後もこの取り組みは続けていきますし、特許も取得はしますが、他の企業はこの技術に手を出さないでくださいというわけではありません。クロスライセンスを結んだり、別の技術を開発したりして、お互いに切磋琢磨するような、ポジティブな形で業界を良くしていければと思います。みんなで同じことをするよりも、それぞれが独自技術を追いかけていくほうが、世の中も良くなっていくのではないでしょうか。

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