新交通システム「Hyperloop」は、真空チューブを使った初めてのテストで時速70マイル(約113km)にしか達しなかったが、同システムの開発を手がけるHyperloop Oneは、公共交通機関の未来にとって画期的な瞬間だと称えている。
テストは非公開で、米国時間5月12日にネバダ州の砂漠にある同社のテストコース「DevLoop」で行われた。必要最小限の機能を備えた車両が、磁力で浮上してDevLoopの上を5.3秒間走行した。
車両は2Gの重力加速度を実現し、時速70マイルの目標速度に達した。Hyperloopはすぐに、時速250マイル(約402km)を目標とする次のテストの準備に取りかかる。
Hyperloop Oneは、最高時速760マイル(約1223km)の高速公共交通機関を目指すElon Musk氏のビジョンが実現可能だと証明しようとしている企業の1つだ。Musk氏は、2013年の論文「Hyperloop Alpha」でHyperloopの設計を発表し、真空に近い環境で運行する磁気浮上式交通システムについて詳述している。
Hyperloop Oneは2016年5月に初となる非真空式の屋外試験を実施し、推進システムを披露した。このシステムにより、車両の速度は1.1秒で時速116マイル(約186km)に達していた。
今回の試験走行では、リニアモーター、車両のサスペンション、磁気浮上システム、電磁制動システム、真空ポンプシステムなどのコンポーネントをテストし、フルシステムが真空中で1つの統合ユニットとして動作できることを示した。
Hyperloop Oneの共同創設者で会長を務めるShervin Pishevar氏は、声明で次のように述べている。「Hyperloop Oneは、初となるフルスケールのHyperloopシステムのテストに成功したことで、これまでに誰もやったことのない偉業を成し遂げた。完全な真空を実現することにより、われわれは、いわばチューブ内に自分たちの『空』を作り上げた。これはまるで、20万フィート(約61km)上空を飛んでいるようなものだ」
「100年以上ぶりに新たな輸送手段が生まれた。Hyperloopは現実のものとして、今ここにある」(Pishevar氏)
Pishevar氏は、1903年にノースカロライナ州キティホークの上空を飛んだライト兄弟の初飛行に言及し、今回のテストをHyperloop Oneにとって「歴史的瞬間(Kitty Hawk moment)」と表現した。
テストに成功したとはいえ、Hyperloopを輸送に使うまでにはまだ克服すべき多くの障害がある。そうした障害には、国民の信頼や政府の支援を得て、システムの新たなインフラを整備することなどが挙げられる。
Hyperloop Oneは、欧州の9路線と米国の11路線を含む世界各地の候補地にコンペティションを開催することで、そうした潜在的な抵抗に対処している。
同社はまた、初のプロトタイプポッド「XP-1」を披露した。長さ28フィート(約9m)のポッドは、アルミニウムとカーボンファイバーで覆われており、車台の上に取り付けられる。このポッドが、チューブの中を移動して荷物や乗客を運ぶことになる。
Hyperloop Oneによると、テストの次の段階では、DevLoopにおいて、より高速で長距離の走路を滑走するポッドを披露するという。それまでの間、同社の走路でさらに多くのテストを実施し、他の部品やソフトウェアを検証する予定だ。
Hyperloopのリニアモーターは現在のところ、長さ1000フィート(約305m)だ。このモーターが稼働する長さ1640フィート(約500m)のチューブは、海抜20万フィート(約61km)の上空に相当する気圧を生み出せる。今回のテストは、モーターの一部である100フィート(約30m)分のみが使用された。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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