6月28日〜7月1日の日程で、モバイル端末・ネットワーク技術などの展示会「Mobile World Congress Shanghai 2017」が開催された。この開催期間に合わせ、中国・上海にR&Dセンターをもつファーウェイが、新しいネットワーク技術「NB-IoT」を利用した商用化済みもしくは商用間近のサービスを披露した。
中国では、広帯域通信用のモバイルネットワークとして、すでに4G LTEが一般化しているのはもちろんのこと、“ギガビットLTE”を実現する5Gに向けた実証実験が進められている最中だ。その一方で、用途を限定したIoT機器向けの狭帯域ネットワーク「NB-IoT」の実用化も急速に広がっている。
NB-IoT(Narrow Band IoT)は、通信速度は低速ながら、従来のモバイルネットワークで使われていた技術と比べ圧倒的な低消費電力で広いカバーエリアを実現する規格。電力供給しにくい場所や機器であっても小容量の電池で長期間駆動でき、多数のデバイスの同時制御も可能なことも合わせ、スマートシティにも適した技術となっている。
ファーウェイは、日本ではスマートフォンメーカーとして認知度が高まりつつあるが、このNB-IoTにかかわるチップ、ネットワーク技術の開発、普及を牽引する企業でもある。同社の子会社であるHisiliconがNB-IoTのチップを製造し、ファーウェイ自身はNB-IoTに対応するネットワーク機器などを開発・供給している。
そのNB-IoTを活用した商用サービスに向けたトライアルの1つとして、上海ではスマートパーキングが始まっている。場所は浦東地区の浦馳路と呼ばれるストリート。2016年12月からプロジェクトが立ち上がり、2017年3月から実証実験をスタートしている。まもなく正式サービスとして開始する予定だ。
このスマートパーキングでは、およそ200メートルほどある1ブロック分の路側帯に22台分の自動車用駐車スペースがあり、各スペースの路面に1つずつ地磁気センサが埋め込まれている。地磁気センサで車両が駐車されているかどうかを検知し、センサに統合されているNB-IoTモジュールでその情報をセンターに送信する仕組みだ。
駐車料金は、巡回している集金人に現金で支払うか、中国国内で広く普及している電子マネー「WeChat Pay」で支払う。この場所では、1時間当たりの料金は7元、次の延長1時間は8元。WeChat Payで支払う場合は、スマートフォン上で空いている駐車スペースの番号を指定し、借りる時間を指定して支払いボタンを押すだけだ。現在は現金とWeChat Payの両方の支払いに対応しているが、正式サービス開始後はWeChat Payのみになるという。
NB-IoTとWeChat Payを用いてシステム化することで、料金収集に関わるリスクを最小限にできるのがメリット。定期的に写真撮影して監視しているため、利用者が万が一その場での支払いを免れたとしても、カーナンバーなどと照合してシステム上でそのユーザーの与信情報と連携させることができる(つまり、悪質な利用者はブラックリストに登録され、ローンなどの審査に通りにくくなる)。また、集金人が直接代金を取り扱うことがなくなるため、集金人が代金を横領したりする心配もなくなるとしている。
NB-IoTを利用したレンタル自転車のデモは、ファーウェイの上海R&Dセンターで行われた。近年、中国各地で増えているレンタル自転車は、現在のところほとんどがGSMのようなレガシーな通信方式とGPSを用いたもの。消費電力が大きいため、自転車の前カゴにソーラーパネルが搭載され、そこで充電した電力で駆動させている。
しかしNB-IoTでは、消費電力が少ないため電子錠に内蔵した電池で駆動可能だ。電池交換なしで2年半ほど動作するとしているが、中国国内のルールにより、レンタル自転車の償却期間が2年と定められているため、2年経過したレンタル自転車は工場へと集められることになる。
レンタルの手順は、電子錠に表示されたQRコードを読み取り、ウェブサイトにアクセスして、そこに表示されるパスコードを電子錠のボタンで入力するだけ。返却時はどこに乗り捨ててもOKで、借りた時間に応じてWeChat Payで支払われる。
現在のところ、NB-IoTを用いたレンタル自転車の実証実験が北京大学のキャンパスで実施されている。大きな問題がなければ1カ月後には正式サービスとして開始するとのこと。
NB-IoTは街灯にも使用されている。中国南部の鹰潭市(Yingtan City)では、NB-IoT内蔵の街灯がすでに5000本ほど設置され、商用化済み。上海R&Dセンターで行われたデモでは、タブレット上で指定した街灯の点灯・消灯を切り替える様子を披露した。
上海R&Dセンターに設置されているデモ用の街灯はやや古いバージョンで、点灯・消灯のみしかできない。実際に商用化されている街灯は、時刻に合わせて遠隔から照度を調整できるようになっており、最適な明るさで節電につなげることが可能だという。設置箇所は今後徐々に拡大していくとしている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」