ヤマトグループ総合研究所は6月29日、トラック納品時に発生している長時間の待機時間を短縮するため、RFID技術を活用した納品業務と車両予約システムなどを連動した新たなスキームを開発したと発表した。
また、その実用化に向けて、RFID(電波の送受信により、非接触でICチップの中のデータを読み書きする技術)の活用による納品業務の効率化の検証や、予約システムの活用による待機時間短縮の効果検証をライオンと実施する。期間は7月3日〜9月29日で、対象区間はライオン西日本保管倉庫(大阪府茨木市)〜ライオン小牧流通センター(愛知県小牧市)間。
同研究所によると、現在トラックを利用した納品業務において、ドライバーの長時間の待機時間が課題になっているという。具体的には、トラックの先着順に納品するため、納品開始時刻の数時間前から多くのトラックが待機し、結果として納品までに長時間の待機時間が発生しているほか、入庫検品時に目視や手書きなどのアナログ作業が多く、時間を要しているという。
また、入庫作業を荷受け場で行うため、入庫スペースが限られている場合は、先に納品された商品の処理が終わるまで次の作業を開始できず、待機時間がさらに延長。トラックから商品が納品されるまで、「どの商品」が「どのトラック」の「どのパレット」に積まれているか分からないため、当日優先的に入庫したい商品があった場合でも優先できず、結果として庫内での作業遅延などが発生してしまうという。
2016年4月に設立したヤマトグループ総合研究所では、こうした社会的課題に対し、物流を切り口とした新たな技術・ソリューションの研究開発している。今回、全国物流ネットワーク協会などの業界団体やトイレタリー業界の各メーカー、ヤマトロジスティクスと連携し、スムーズで効率的な納品を実現するスキームを開発した。
今回開発したスキームは、発送元・ドライバー・納品先が携帯端末で相互に入庫スケジュールの確認や連絡ができるアプリを活用することで、事前に納品時刻や納品口の予約が可能になるというもの。
発送元と納品先の双方の拠点において、RFIDを活用した入出庫検品業務をし、出庫作業時に、RFIDタグが添付されたパレット、商品、トラック情報を紐付けたASNデータ(事前出庫明細データ)を作成し、事前に納品先に送ることで、納品先ではRFIDタグの読み取りのみで検品作業が完了となる。また、ASNデータを事前に納品先に送ることで、どのトラックを優先的に納品させるかといった車両の入庫スケジュールの調整にも対応する。
同スキームを導入することで、ドライバーは事前に予約した時刻に納品口に到着すればよく、入庫検品もスムーズになり、施設周辺で長時間待機する必要がなくなるという。また、RFIDの活用で出庫検品時の業務負荷を軽減し、人的作業によるミスを削減できるようになるとしている。納品先についても、RFIDの活用により、入庫検品作業の生産性が向上。必要な商品を優先的に入庫することで、出荷作業がスムーズになり、顧客満足度の向上につなげられるとしている。
今後、同研究所では、2017年12月までに実証実験の効果を検証し、実用化に向けて調整をするとしている。そして、このスキームをライオンの自社内拠点間の物流に適用するだけでなく、トイレタリー業界全体に展開。さらには、トラック運送会社やトラック運送業務を伴うさまざまな企業・業界に向けたプラットフォームとして提供することを目指すという。
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