タレントアンドアセスメントは6月28日、開発を進めている人工知能(AI)を活用した採用面接サービス「SHaiN」(シャイン)の説明会を開催。サービス概要の説明とともに、人型ロボット「Pepper」に搭載した“AI面接”のデモンストレーションを実施した。
このサービスは、企業が求める人物像や採用基準に基づき、AIが人間の代わりに採用面接を行うというもの。主に新入社員となる学生の候補者を対象にしている。候補者はSHaiNと連携したスマートフォンやロボットと面接を行い、その回答に基づき候補者の資質を分析して診断結果データを提供するというもの。同社によれば、このようなサービスは日本で初めてとしている。
基本的に候補者は、各企業へのエントリー後に届くメール内に記載されているURLもしくはQRコードよりスマートフォンアプリをダウンロード後、候補者の都合の良い時間や場所で面接を行う。スマートフォンが使えない候補者への対応として、Pepperと連携させ、特設会場などに設置したPepperで採用面接が受けられるようにするという。
これによって企業側としては、従来の採用面接に費やしていた人件費や時間を削減できるとともに、人間による採用面接で課題視されてきた評価のばらつきを改善し、採用基準を統一することができる。また面接官の都合に左右されず、資質を見抜くのに十分な面接時間を確保できる。そして24時間かつ好きな場所で面接に応じられるため、他社と選考のバッティングを回避や、遠方の学生の移動時間や費用による機会損失を減らせる。さらに地方企業が首都圏の学生に対してアプローチすることも可能になる。採用面接時のデータは、今後ビッグデータとして活用していく予定としており、採用効率の向上も期待できるという。
また候補者側としても、自分の都合の良い時間や場所で採用面接を受けられるうえ、面接官の外見や態度に影響を受けたり、面接官の個人的な印象や経験則で判断されることなく、公平に採用面接が受けられるメリットがある。
Pepperで行ったAI面接のデモでは、Pepperが手ぶりを交えながら候補者に質問し、それに回答していく形で進行。単純な「はい」「いいえ」だけでは回答できない質問を出したり、「もう少し詳しく教えてください」といった“深掘り”したるする場面も。質問内容は回答にあわせてAIが判断し投げかけていく形という。また回答するときの候補者の表情も分析の対象になっているという。
8月から優先利用の申し込み受付ならびにサービス展開を開始予定。利用料金は診断結果1件につき標準価格で1万円を予定し、導入条件やカスタマイズの有無で異なるとしている。初年度では約3万5千人の分析に対応することを想定しているという。
タレントアンドアセスメント代表取締役を務める山崎俊明氏は、昨今の就職活動や採用事情がネットを通じて広く大量にエントリーができるような状態にあることから、企業としても“選び抜く力”が必要になっているが、昔ながらの経験と勘に頼った面接を実施しているのが現状と指摘する。それに加え、優秀な人材の確保が急務としながらも、より多くの人数から選んだ方がいいという“集める力”にコストをかけているという。しかしながら、選び抜く力や、入社しようと思うモチベーションにもつながる“動機づける力”も均等にしなければ、企業としての採用力につながっていかないと語る。
SHaiN導入のメリットは前述した通りとなるが、役割としてはより多くの候補者に対応するべく、従来の筆記試験と一次面接を担うことを想定しているという。一方で、現在のAI技術では、感情の面で哲学が合うどうか、文化が一致するかを十分に判断するのが難しいため、二次面接や最終面接といった領域の活用は想定していないとしている。また評価レポートについてもあくまで候補者の資質分析であり、企業によっても求める人材の資質が異なることから、サービス側で合否を提示することはなく、判断は企業にゆだねるという。
今後の事業展開としては、学生だけではなく中途採用への対応はもとより、多言語の対応、そして海外企業への展開を考えているという。
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