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インドで進む「ホテル予約」の再構築--ダブルブッキング問題を解消へ

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 ホテル予約サイト市場は、Booking.comなどグローバル企業のサービスが世界的に浸透し、業界の形勢は固まりつつある。それは先進国だけでなく新興国、今回取り上げるインドも同じだ。

 しかしそんなインドで、大きくリスクを取れるベンチャーに限り、市場に入り込む余地が見つかったかもしれない。低価格帯ホテルからの「リブランディング」(再構築)に対する潜在的需要があったのだ。

リブランディング市場勃興のきっかけは「質の底上げ」

 新興国を訪れたことがある人なら、ホテルをネットで予約したものの、実際の客室やサービスの質との差にがっかりした経験があるかもしれない。もちろんインドも例外ではない。

 そうした不便をネットの力も借りて解決しようと、まず立ち上がったのが低価格帯ホテルの運営代行事業である。集客に苦戦するホテルの部屋を借り、自社ブランドとしてサービスを提供するものだ。


「OYO Rooms」

 代表的なのが「OYO Rooms(オヨルームズ)」。ソフトバンクから2.5億ドル(約278億円)を調達し、安くてもWi-Fi、テレビ、朝食など最低限のサービスを受けられるブランドを確立した。サービスの均質化だけでなく、スマホアプリなど予約導線の強化なども図り、インドの170の都市で約6000のホテルと提携、6万8000もの部屋を運用している(2016年6月時点)。

 しかし、最近はOYO Roomsのような「一部の部屋を借りる」モデルに歪みが生じ始めており、このリブランディング市場の最前線では、「ホテルを丸ごと借り上げる」モデルが台頭しつつある。そのトレンドに先鞭をつけたのが「Treebo(トリーボ)」だ。

歪み=ダブルブッキング問題を解消、OYO Roomsも参入

 Treeboはベンガルール拠点のホテルチェーンベンチャー。これまでインドの代表的なベンチャーキャピタル Matrix PartnersやSAIF Partners、Bertelsmann India Investmentsから2700万ドル(約30億円)の資金を調達している。


「Treebo」

 TreeboもOYO Roomsと同様、集客に苦戦するホテルと提携し、Treeboのブランドで集客および質が担保されたサービスを提供している。しかし、OYO Roomsと大きく異なるのは、OYO Roomsがホテルの一部を借りてきたのに対して、Treeboはホテルを「丸ごと」借り上げることだ。

 一見、宿泊客にとっては些細な違いに見えるかもしれないが、ホテル側からすれば実は利点が大きい。OYO Roomsのモデルの場合、ホテルがOTA(Online Travel Agency)経由で直接集客しようとする部屋と、OYO Roomsが集客しようとしている部屋が競合してしまう事態が発生しやすい。

 すると、直接集客した予約とOYO Rooms経由の予約を管理しきれず、後からホテルを訪れた宿泊客が宿泊を拒否されるダブルブッキングにつながり、顧客満足度が著しく下がってしまうことがある(実際、筆者も何度もこのような体験をした)。


Treeboの創業者たち。3人ともインド工科大学出身

 特に予約を管理する体制が脆弱な個人経営の小規模なホテルほど(インドではほとんどのホテルがこの形態)、Treeboを活用するメリットは大きい。OYO Roomsも最近、ホテルを丸ごと借りて運営する事業モデルに参入し、注力し始めている。

売上3倍、部屋稼働率85%、平均レビューを4.5に

 Treeboのサービスによって、事業再建を果たしたホテルも出始めている。デリーから約800km南に位置する都市インドールにあるホテル「DAKSH」だ。

ホテル「DAKSH」
ホテル「DAKSH」

 2016年1月にオープンした同ホテルは、同年7月にTreeboと契約を開始。オーナーはそれまでホテル経営の経験がなかったこともあり、Treeboとの契約を結ぶまで部屋の稼働率は20〜25%と低迷。独自の営業網やブランド力は皆無に等しく、さらにOTAからは「20%」という高いコミッションを要求され、オープン早々経営難に陥っていた。

 そこで、Treeboの集客チャネルとそれらを統一したOTAなどの配信ツールを駆使。集客率は徐々に改善されていった。直近10カ月では、客単価を2000ルピー(約3400円)と健全な価格に保ちながら、契約前と比較して売り上げは3倍、部屋の平均稼働率も85%、平均レビューも4.5点となり、現在は軌道に乗っているという。

 Treeboの努力の甲斐もあり、インドの宿泊体験の質は大きく改善されてきた。しかし、依然として残るダブルブッキングの問題やスタッフのトレーニングなど、課題はまだ山積だ。インドは世界からの注目が高まっているが、訪れた人びとを満足させるサービスをベンチャーの力でますます磨き上げていってもらいたい。

(編集協力:岡徳之)

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