ARMは米国時間3月21日、次世代のマルチコアテクノロジ「ARM DynamIQ」を発表した。これは、今後の「ARM Cortex-A」プロセッサすべての土台となるマルチコアプロセッサ向けマイクロアーキテクチャであり、10年にわたるイノベーションの成果となっている。
同社のこれまでのプロセッサテクノロジは携帯電話といった従来型の市場を対象としていた一方、DynamIQは柔軟性や多機能性を備えているため、クラウドからネットワーク、エッジデバイスに至るまでのあらゆる場所で稼働するインテリジェントシステムで利用できる。
ARM Compute Products GroupのゼネラルマネージャーであるNandan Nayampally氏は今週、報道陣に対して「システムがより複雑化するにつれ(中略)、マルチプロセッシングのあり方を再定義する必要が出てきている」と述べた。これは、「極めて多様化した、さまざまなソリューションを実現可能にするうえで、CPU処理自体の柔軟性だけでなく(中略)、異質な演算能力をいかに強化、統合していくか」に取り組むことを意味している。
ARMはCortex-Aの最新版をまだ発表していないが、英国ケンブリッジに拠点を置く同社は、「複数のパートナー企業」が既にDynamIQテクノロジを採用していると述べている。これら企業の名前は、2017年中に予定されている新プロセッサの発表時に明らかになるものの、同テクノロジを採用した製品が利用可能になるのは2018年に入ってからになる予定だという。
DynamIQはARMの「big.LITTLE」テクノロジ上に構築される。big.LITTLEは低消費電力回路(LITTLE)と高性能回路(big)を組み合わせるテクノロジであり、これによって携帯電話やタブレットの処理能力を犠牲にすることなく、バッテリ持続時間を延ばせるようになる。
「適切なタスクを適切なプロセッサで」というアプローチをさらに推し進めることで、DynamIQは単一クラスタ内で最大8つのコアをサポートする。big.LITTLEでは、クラスタ単位に特定のパフォーマンスレベルを設定するようになっていた。一方、DynamIQでは、各コアに異なるパフォーマンス特性や電力特性を割り当てることで、機械学習や人工知能(AI)アプリケーションにおける応答性をさらに高められるようになっている。また、こういった柔軟性のほかに、メモリサブシステムを再設計し、データアクセスの高速化とパワーマネジメント機能も強化している。さらにDynamIQは、電力状態ときめ細かい動作速度制御との間でバランスよく切り替えも実現している。
Nayampally氏は「クラスタだけでなく、各プロセッサのチューンアップも可能になり、適切な電力供給特性とエネルギー特性に対する適切なパフォーマンスというトレードオフが実現できる」と述べた。
同氏はこのテクノロジについて、演算能力に対する需要が加速している現状を見ると特に、ARMがモバイル市場以外でシェアを伸ばしていくうえで力になると考えられると説明した。ARMは法人分野で既にシェアを大きく伸ばしている。ARMによると、同社のパートナー企業は過去4年間で500億個のチップを出荷しているという。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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