東京・世田谷区の「樫尾俊雄発明記念館」で、カシオ計算機の歴代の関数電卓、ゲーム電卓、電子辞書、デジタル英会話学習機を展示する特別展示「学びと遊びの電卓・電子辞書展」を3月21日~5月10日の期間限定で開催する。見学は無料だが、ウェブサイトから予約が必要になる。
なお、公開の前日となる3月20日は「電卓の日」だ。1974年に日本の電卓生産台数が年間1000万台に達して世界一になったこと、国産の電卓が発売され10年目になったことを記念して、日本事務機械工業会(現:ビジネス機械・情報システム産業協会)によって制定された。
樫尾俊雄発明記念館は、元カシオ計算機会長の樫尾俊雄の自宅を改装したものだ。閑静な住宅街の中にある。カシオ計算機の最初の製品である1957年に開発した世界初の小型純電気式計算機「14-A」をはじめ、電卓、時計、電子楽器などの代表的な発明品が見られる。
カシオは、一般公開に先駆けて、プレス向けに特別展示の公開と説明会を開催した。カシオ 執行役員 CES事業部長の太田伸司氏は、14-Aから1974年に開発したパーソナル関数電卓「fx-10」、1996年に開発した本格電子辞書「XD-500」などを振り返り、「(電子辞書も)生まれは電卓。ボタンと表示があるもので役立つものはなにかを考え、電子辞書として進化してきた歴史がある」と背景を語った。
カシオ計算機は1950年代から開平(ルート)や三角関数が計算できる科学技術用計算機を開発。1972年には複雑な計算が手軽にできる関数電卓へと進化させた。電気や建築などの技術計算や数学の学習に広く活用されている。
直近10年では、年間販売台数を約1.5倍に拡大しており、2016年は世界で2500万台を出荷。世界100カ国強の教育市場で使われている。スーパーの棚にペンや三角定規などと同様に関数電卓が並んで販売されており、授業で必要なツールとして取り入れられている国も多いという。
太田氏は、「米国が3割ぐらいで、欧州は1割強ぐらい。残りをアジアと中南米、中東で3分割した印象。日本はきわめて少ない。大学生の一部と技術職しか使われていないのではないかという数量。国内では地味な存在だが、海外では大スター」と語った。
日本ではなぜ関数電卓の利用が少ないのか。長野県総合教育センター 教科教育部主任指導主事の新井仁氏は、主に日本人の“気質”にあると説明する。
「日本人は勤勉なので、なんでも苦労して身につける傾向にある。電子辞書があっても、まずは紙の辞書を引けるようにすることが大事なのもその一つ。だが、海外に目を向けると、試験の時にグラフ関数電卓を持ち込みなさいというところもある。数学教育は、計算ができることじゃない。なにかを解明できるようにしないといけない。手計算で処理できないものは授業で扱いにくいが、テクノロジを用いることで煩雑な処理を簡単に済ませ、レベルの高い数学を学んだり本来の学習に十分な時間をかけられるようになると考えたい」と提言した。
一方で、予算的な問題もある。「1クラスで使うと50台は必要になる。予算付けをすることが困難で、関数電卓をほかでどう使えるのかも問題になる。でも、まずこれだけの価値があると声高にいうべき」と語った。
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