キッズYouTuberは簡単に見つかる。多くの小学生が自らYouTuberを名乗り、動画を投稿しているからだ。YouTubeには執筆現在「ゲーム実況」とつく動画が約243万本アップされており、そのうち8万7700本が「小学生」とタイトルにつくものだ。
再生してみると、トークだけはどこかで聞いたYouTuberっぽい。保護者などにやってもらったのか、中には自分の姿を輪郭で切り抜いてはめ込んでいたり、テロップなどが出るものもある。見ていくと、本名と思われる名前で登録していたり、顔を出しているものが多いようだ。
あるキッズYouTuberは、マインクラフトなどのゲーム実況動画を配信している。1年くらい前から10本ほどの動画を投稿しているが、少ないものは再生数は30回程度。その中に、1本だけ再生数が4000回程度と多いものがあったが、コメント欄に「きもいです」「ごみどうが」「下手くそ」「クソ動画」など、ひどいコメントが殺到して炎上状態となっていた。炎上のせいか思ったように視聴されないためか、動画の投稿はしばらく前で止まっていた。
視聴されないだけなら問題はない。下手に注目を集めてしまい、炎上が起きている子どもも少なくない。ゲームの違法ダウンロードがバレてしまい炎上したり、アニメを放送しているテレビ画面をそのまま映して投稿していた小学生もいた。炎上した小学生は、名前や小学校名などが特定され、個人情報が現在も公開され続けている。
以前、中高生向けのお仕事紹介サイトを手伝っていたことがある。彼らにとって知っている職業は、保護者の従事する仕事か、日常的に接する教員、警察官、消防士など非常に限られており、将来自分が就く仕事のイメージは「サラリーマン」という漠然としたものしかない子が多かった。
世の中の大半の仕事は子どもたちからは見えず、存在も知らないものが多いし、存在は分かってもイメージはしづらい。アイドルや声優などが子どもから注目されるのは、彼らにとっては身近な職業だからだ。YouTuberやゲーマーも、彼らにとっては知っている数少ない職業のうちの1つなのだろう。
その上、一見楽しいことだけをやって暮らしているように見えるし、テレビなどにも出て羨ましいと感じる。小学生がYouTuberやゲーマーになりたいのは、ある意味当たり前のことなのだ。
小学生YouTuberの大半は、HIKAKINなどの真似をした動画をアップしているだけであり、特に発信したいことがあるわけではない。本当に発信したいことがあったり、本気で目指すのであればいい。しかし、そうでないなら、いきなり目指すのではなく、もっとさまざまな仕事の存在を知ってからでも遅くはないのではないだろうか。
今時は「キッザニア」など、さまざまな仕事があることを知り、仕事をしてお金をもらえる疑似体験ができる施設もある。保護者の周囲にいるさまざまな職業の大人たちに話を聞く機会を設けたり、職業人のドキュメンタリーなどを一緒に見て、仕事に対するイメージをふくらませる機会を持つといいだろう。
ゲーム実況動画を楽しんだり、自分も配信してみたいと思うことは悪いことではない。ただし、小学生には動画を投稿する技術こそ分かっても、言ってはいけないことや投稿すべきではないことなどはわからないようだ。子どもがそのようなことに興味があったら、保護者は行動を見守って危険なことをしないよう注意してあげてほしい。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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