「U-NEXTとUSENが持っている特有の強みを共有しあうことによってシナジーが出るのではないかという検討から現在に至った」――U-NEXT代表取締役社長である宇野康秀氏は、USENとU-NEXTを経営統合する狙いをこう話した。
U-NEXTは、2月13日に子会社を通じてUSEN株式に対する公開買付けの開始と経営統合に関する基本合意書を締結したことを発表。U-NEXTを存続会社として、USENを吸収合併することを明らかにした。2月16日に開催された2016年12月期の決算説明会でその詳細を説明した。
「U-NEXTは映像配信事業という大きな成長市場において、一定の実績を作ったが、さらなる飛躍のため、より安定した事業規模にしていく必要がある。一方、USENは事業の安定化は達成したが、成長市場に対する踏み込みがされていないところがあった」と両社の課題を挙げる。それらを補いさらなる成長戦略につなげるための手立てとして今回の経営統合に踏み切った。
今後はU-NEXTが特別目的会社SPCを設立し、USENに対してTOBを実施。U-NEXTとUSEN双方で会社分割による新設会社を設立し、既存事業を承継する。その後U-NEXTとSPCを合併し、合併法人とUSENを合併することで持株会社体制に移行。持株会社の傘下にU-NEXTとUSENの各事業を子会社として配置する。
合併終了後は「USEN-NEXT HOLDINGS(仮称)」の下に、5つの子会社を配置。子会社はUSEN、U-NEXTのほか、法人向け、個人向けの通信事業を担う「USEN-NETWORKS(仮称)」、レジャーホテルシステムやビジネスホテルシステム事業を手がける「ALMEX」、「ヒトサラ」などのレストランメディア事業を行う「USEN-MEDIA(仮称)」になる。
「顧客訪問を主体にしているUSENの営業に、U-NEXTが培ってきたテレマーケティングやウェブでの顧客獲得を重ねることでUSENの顧客拡大ができる。U-NEXTも、現在の映像コンテンツを主体としたビジネスから、音楽サービスや、ライブ放送、多岐に渡るコンテンツビジネスへと拡大ができるのではないかと考えている」と宇野氏は法人向けを中心に展開してきたUSENと個人向けサービスを扱ってきたU-NEXTの営業力、事業を掛け合わせることで、さらなる拡大を狙う。
同日発表されたU-NEXTの通期業績は、売上高が前年同期比35.0%増の458億4600万円と伸長するも、営業利益は前年同期の10億300万円の黒字から3億9600万円の赤字、経常利益は同9億7700万円の黒字から4億3600万円の赤字、当期純利益は同5億2200万円の黒字から9億1100万円の赤字とそれぞれ転落した(※編集部注)。
これは第3四半期において、「U-mobile」「U-NEXT光」サービスにおける貸倒引当、資産の大幅な整理による損失の計上が原因。「U-mobile、U-NEXT光で個人ユーザーからの未回収金が発生し、全体としては赤字という結果に終わったが、すでに手を打っており第4四半期では業績が改善している」(宇野氏)とする通り、第4四半期では売上高が127億9400万円、営業利益は2億5200万円、経常利益は2億3900万円、当期純利益は2億5300億円へと回復している。
通期のセグメント別では、映像配信サービス「U-NEXT」を持つコンテンツプラットフォーム事業が、売上高157億6100万円、営業利益が9億2800万円、U-mobileなどを展開するコミュニケーションネットワーク事業が売上高300億8600万円、営業利益が6億1400億円の赤字となった。「損失は一時的なもの。未回収金の対応もできており、コミュニケーションネットワーク事業に関しても、今期以降は黒字にできると見通し」(宇野氏)だ。
過去3年を見ると、U-NEXTの契約者数は2.9倍、U-mobileの総契約回線数は11.6倍にまで伸長。宇野氏は「U-NEXTは、成長市場にあるが、競争も激しい。会員数は『dTV』『Hulu』につづいて3位につけており、弊社が運営しているソフトバンクの『アニメ放題』までを含めれば第2のポジションになりつつある。独自性を出すことで十分会員数のシェアは高められると思っている。一方、U-mobileは利幅の薄いプリペイド回線の割合を下げ、月額課金回線に重点を置き、こちらを伸ばした」と明確な戦略を敷く。
統合後については「私たちの提供するサービスが世の中に価値あるものを提供し、提供したサービスによって社会が進化していく、そういうものを作ってきたという自負がある。U-NEXTとUSENの力をあわせることで、価値ある進化をこれからも作っていきたい」(宇野氏)とコメントした。
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