ソフトバンクグループ代表取締役社長の孫正義氏は、2月8日に開催された決算会見で、米トランプ大統領がさまざまな分野での規制緩和を公言していることについて、「歓迎すべきこと」と語った。
孫氏は、2016年12月に米ニューヨークのトランプ・タワーを訪れ、大統領就任前のドナルド・トランプ氏と会談。その際に、米国企業に500億ドルを投資し、5万人の新規雇用を創出すると約束していた。同氏は米国に限らず、インドやイギリス、ロシアなど各国の首相や大統領に会っているとし、「投資をするためには、その国の規制や法律が関わってくる。そこと齟齬があってはいけないからコミュニケーションする。挨拶にいくのは当然の行為」と説明した。
トランプ政権については、政治に関するコメントは控えるとした上で、「米国でさまざまな規制緩和が進めば、そこには多くのビジネスチャンスがあり、新しい雇用も生まれる。(規制緩和を)やると公言しているからには楽しみに待っている」と期待を寄せた。
同社は2013年7月に米国3位の携帯キャリア「Sprint」を買収。さらに4位のT-Mobile USを買収し合併することで、“2強”のVerizonとAT&Tに対抗しようとしていたが、当時は米規制当局による認可を得られなかったため、計画を断念したという苦い過去がある。トランプ政権になり、連邦通信委員会(FCC)の委員長が変わることで規制が緩和されれば、孫氏がT-Mobileの買収に再挑戦するのではという見方がある。
T-Mobileの買収について孫氏は、「3〜4年前は我々は買う側だったが、現在は買うかもしれないし、売るかもしれないし、合併するかもしれない。それに相手はT-Mobileかもしれないし、まったく別の会社かもしれない」とコメント。Sprintの経営が改善傾向にあり、当時とは状況も異なることから、T-Mobileの買収は選択肢の一つであり、あらゆる可能性を検討したいとした。
2017年3月期第3四半期(2016年4〜12月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.3%減の6兆5814億6600万円、営業利益は同18.0%増の9496億6000万円、純利益は同2倍(99.9%増)の8574億3100万円だった。売上高は減少したが、円高の影響によるものでドルベースであれば増加していると孫氏は語る。
携帯電話の累計契約数は前年比54万増の3223万、固定通信の「SoftBank 光」は前年比2.6万の314万契約だった。また、フリーキャッシュフローの通期予想は5000億円から5500億円に上方修正した。子会社のヤフーは広告収入が前年比10%増の729億円だったほか、「Yahoo!ショッピング」のストア数はこの3年で16倍の48万まで増え、取扱高も3年で2倍の1407億円となった。
米国の通信子会社Sprintは、営業利益が前年同期と比べて約3倍となる1452億円を達成。米国キャリアの中で最小の設備投資額でありながら、ネットワークの信頼性は他社と僅差だとするニールセンの調査結果を紹介した。「もうじき1位になる。ソフトバンクのネットワークは世界で1番つながる」(孫氏)。
同社は2016年9月に、英国の半導体設計大手であるARM Holdingsを約3.3兆円で買収した。ARMの第3四半期の売上高は、前年同期比8%増の1381億円。また、ARMベースのチップ出荷数は125億個にのぼるという。孫氏は、欧州最高峰の研究所の次世代スパコンにもARMのチップが採用されたと胸をはる。
2016年10月には、10兆円規模の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立した。2017年に60歳を迎えることについて孫氏は、「ビジョン・ファンドを作ったことで、ソフトバンクを300年企業にするためのモデルとしての構えがある意味できた。これから10年でそれを実行しながら、後継者を見出して育成することが重要なテーマ」と語った。
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