若き日本人が生んだ米国トップシェアの福利厚生「AnyPerk」--創業者・福山太郎氏の挑戦

藤井涼 (編集部)2017年01月13日 08時00分
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 日本では馴染みのある「福利厚生」という領域で、米国トップシェアのサービスを生み出した日本人がいる。AnyPerk創業者の福山太郎氏だ。1987年11月生まれの現在29歳。「Dropbox」や「Airbnb」といった有名IT企業を輩出した米国のベンチャーキャピタル「Y Combinator」を卒業した初の日本人でもある。

 福山氏が約5年前の2012年に立ち上げた福利厚生サービス「AnyPerk(エニーパーク)」は、2016年12月末時点で1000社以上に導入されているという。当初は中小企業向けに提供していたが、現在は顧客管理ソリューションのセールスフォースや、格安航空のヴァージン・アメリカ、コスメショップのセフォラなど、大手企業からも引き合いがあるそうだ。また、ほぼすべての企業が全社員に導入し、その後のサービス継続率も99%というから驚きだ。2016年9月には11.5ミリオンドルの大型調達も実施した。

AnyPerk創業者の福山太郎氏
AnyPerk創業者の福山太郎氏

 多くの日本企業が進出しては撤退するという苦い経験をしてきた米国において、これだけの成果を上げているAnyPerkだが、意外と日本での認知度は高くない。それは、福山氏が「創業時はメディアの取材などは受けず、ユーザーと向き合い、コードを書け」というY Combinatorの教えを守っていたからだ。また、同社の顧客は米国内にしかいないため、あえて日本で露出する必要がなかったとも言える。

 そんな福山氏が2016年12月末に一時帰国するタイミングで取材する機会を得た。実は過去に日本のメディアで紹介された記事は、福山氏の人柄や起業のエピソードに焦点をあてたものが多く、肝心の事業内容についてはそこまで触れられていない。AnyPerkとはどのようなサービスなのか、福山氏に聞いた。

「福利厚生」と「社員表彰」がサービスの核

 同社が提供するプロダクトは大きく2つある。1つ目が、主力事業である福利厚生サービス「Perks(パーク)」だ。導入企業は、ジムや映画鑑賞、スポーツ観戦、ホテル、携帯電話料金など、AnyPerkのパートナーが提供する850を超える割引や特典を受けられる。

福利厚生サービス「Perks(パーク)」
福利厚生サービス「Perks(パーク)」

 豊富な割引クーポンがあっても使われなければ意味がない。そこで同社では、テクノロジを活用して、従業員に利用してもらうためのさまざまな仕掛けを用意している。たとえば従業員が映画館に入ると、GPSと連動して専用のスマートフォンアプリにチケットの割引情報などが通知される。また、ウェブブラウザ「GoogleChrome」の拡張機能をインストールすることで、パートナーのECサイトなどに行くと、自動で商品の割引情報が画面に表示されたりするという。

スマートフォンのGPSと連動
スマートフォンのGPSと連動

 ビジネスモデルは、導入企業から従業員1人あたり平均で月額2~5ドルを得るもの。割引などの特典を提供するパートナー企業とは金銭のやりとりは発生せず、AnyPerkからの送客という形で還元しているそうだ。導入企業の人事担当者は、専用の管理画面から、何人の従業員がどの特典をどれくらい使っているのかを把握できるため、ROI(投資対効果)の妥当性を確認できる。また、導入時に人事システムと連動するため、従業員の誕生日などの情報を追加入力する必要がないという手軽さも特徴だ。

 そして2つ目のプロダクトが、2016年5月に提供を開始した社員表彰プログラム「Rewards(リワード)」。マネージャーが成果を出した従業員に対して、ポイントという形でインセンティブを支払えるサービスだ。従業員は貯まったポイントを、iTunesカードやAmazonギフト券、マグカップ、ランチ券、さらにはスカイダイビングなど、200以上のパートナーの特典と交換できる。

社員表彰プログラム「Rewards(リワード)」
社員表彰プログラム「Rewards(リワード)」

 「SnapchatやInstagramに写真を投稿すると、すぐに『いいね!』などの反応がくるため、米国ではリアルタイムにフィードバックを受けたい若者が増えているが、彼らは会社にもそれを求めるようになっている。たとえば、遅くまで働いたら上司に褒められたい、誕生日にはケーキで祝ってほしいなど、承認欲求が強く、そういったインセンティブがないとすぐに転職してしまう」(福山氏)。

 日本では従業員の成果を祝うために飲み会を開いたりすることもあるが、米国ではその代わりにギフトカードを贈る文化がある。ただし、現在も8割近くの企業がコンビニエンスストアなどで購入した物理的なギフトカードを手で配っているという。Rewardsはこれをオンライン化したもので、カードを買う手間が省けるだけでなく、実際にマネージャーが従業員にどれだけポイントを支払ったかを可視化できるようになるという利点もあるそうだ。提供を開始して半年ほどだが、こちらも急成長しているという。

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