訪日外国人旅行客数が2000万人を突破し、日本の旅行業界、特にインバウンド業界に追い風が吹いている。さらに多くの外国人旅行客を呼び込むとしたら、人口が爆発的に増えている東南アジアは外せない。しかし、東南アジアの多くの人びとにとって海外旅行の手続きは一苦労。なぜなら「ビザ」の問題があるからだ。
ビザの問題は、日本人にとってはあまり馴染みがないかもしれない。なぜなら日本のパスポートは“強い”からだ。日本人旅行客がパスポートのみで渡航できる海外の国は173カ国。ほとんどビザいらずだ。
それに対して、タイ人は71カ国、フィリピンは61カ国、ベトナムは47カ国、カンボジアは50カ国と、これらの国の人びとがビザなしで入国できる国の数は、日本の半分以下に留まっている(世界パスポート自由度ランキングより)。
加えて、いざビザを取得しようにも、その手順が書かれた大使館のウェブサイトは読み解きにくく、他の参照できる情報を提供する信頼の置けるサイトもごくわずか。実際の手続きには何枚もの書類を提出したり、大使館を訪れる必要があったりと手間暇がかかる。
そんな中、マレーシア拠点のスタートアップ「Evisa Asia」が、東南アジアの人びとの約60カ国への渡航に必要なビザに関する情報を集約し、さらに手続きを簡易化させるアプリをリリースした。
Evisa Asiaは現在、約40カ国の言語に対応。日本語にもすべて正確とは言いがたいが対応している。
ユーザーは、サイトのトップページで自分の国に対応するようページを切り替え、検索窓に行き先の国名を入れる。すると渡航にビザが必要か否か、ビザを取得するために満たすべき条件などの情報をまとめてくれる。
さらに、代行手数料はかかるものの、ビザ関連の手続きをアプリでできる。現時点では、e-visa、ビザステッカーの申請、インビテーションレター、アプルーバルレターの作成などを請け負っている。
渡航先がどの国であっても、Evisa Asia独自の統一されたフォームを使ってスムーズに手続きができる。システムにはビザの有効期限や申請料金、必要事項など、各国で更新される最新のルールが随時反映されるため、ユーザーは変更を気にする必要がない。
申請にパスポートの現物が必要な場合は、マレーシア国内でのみ代行サービスを受け付けている。その場合、ユーザーは(1)パスポートをEvisaAsiaと提携する最寄りの旅行代理店に預ける、(2)家まで取りにきてもらう、(3)EvisaAsiaのオフィスに行きドライブスルーで預ける、このいずれかの方法でパスポートを預け、発行されたビザとともに返却されるのを待つ仕組みだ。
Evisa Asiaは、2018年までにマレーシア以外の国々にも拠点を増やし、代行サービスの提供範囲を広げることを目標にしている。
Evisa Asiaの創業者であるLee Earn Pinさんは、カンボジアが2006年に初めてe-visaのシステムを導入した際に、その構築を担った人物。それまでの煩雑な書類作業が激減し、今では1日に約300件の申請を受け付ける、カンボジアの観光業を支えるシステムとなっているという。そのときの経験とノウハウをもとに、サービスを2010年に開始。累計で約1万件のビザ申請を受け付けてきた。
「ビザ取得の要件は、せっかく今日把握したとしても明日には変わりうるもの。ビザのエキスパートとしてあらゆる変更に対応し、飛行機のチケットを取るのと同じくらい簡単にできるものにしたい」ーーLeeさんはマレーシアの現地メディアにこう意気込みを語った。
東南アジアの海外渡航者数は2000年の3600万人から10年でおよそ倍増。2020年には1億2300万人に達すると見込まれている(UNWTO2012年報告書より)。ビザ取得の手続きがスムーズになれば、さらに加速するだろう。日本の観光業界の盛り上げにも一役買ってくれることを期待したい。
(編集協力:岡徳之)
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