店舗向けサービスのイメージが強いUSENが、新たな柱の1つとして取り組んでいるのがオフィス向けの音楽サービス「Sound Design for OFFICE」だ。事業スタートから4年目を迎え、導入先は当初の4倍にまで拡大。「ストレスチェック制度」の導入を受け、現在問い合わせは急増しているという。
「導入先の企業の方からは、社内のコミュニケーションが円滑になった、残業が減ったなどの声をいただいている。無音状態はムダな緊張を生んでいたことが実感として伝わっているようだ」。USEN法人営業統括部オフィスサウンド営業部部長の齋藤淳氏は、Sound Design for OFFICEが提供する環境をこう話す。
Sound Design for OFFICEを開始したきっかけは、USEN代表取締役社長の田村公正氏が「音楽の効能をきちんと生かしたことで、社会的貢献がしたい」という思い。2013年2月に本格スタートした。
通常のUSEN放送がオフィスに使われていたことは、これまでもあったが、まだまだオフィスに音楽を流すことに抵抗を示す大企業も多かったとのこと。「特定の音楽を聴く前と後では、手の甲の温度が上昇したり、唾液の分泌量が増えたりといった変化が起こることから、副交感神経が刺激されることが実証されている。こうした“効能”をきちんと伝えることで、オフィスに特化したUSEN放送の事業が軌道に乗ってきた」と齋藤氏は振り返る。
Sound Design for OFFICEでは、集中力を高める要素を取り入れた「Concentration ~働く人の集中力UP~」チャンネルや、休養室や医務室といったメンタルヘルスケアを行うスペースに最適な「メンタルケア ~うつに寄り添う音楽~」チャンネルなどを用意。いずれも医師や免疫音楽療法学の研究者が監修しており、チャンネルの効能も調べている。
使い方は導入企業によってさまざまだ。「ブルーベリーアイ」などのサプリメントを手がけるわかさ生活は時間帯ごとにBGMを変える運用を実施し、働きやすい職場環境づくりを推進。現在では、全国5カ所の支店に導入を拡大した。絆創膏を製造するリバテープ製薬では、始業時はアップテンポ、終業時は清楚など、時間ごとに異なる曲を選択し、業務にメリハリを与えているとのこと。化学メーカーの日立化成は、昼休みにSound Design for OFFICEに通常のUSEN放送を追加して、英会話番組を流しているほか、毎週水曜日のノー残業デーに、退勤を促すために「ノー残業デーアナウンス」チャンネルをプログラム設定するなど工夫しているという。
「日本ハムビジネスエキスパートでは、春先の放送プログラムを新入社員の方が担当しているそう。これにより、先輩社員が新入社員の顔や名前を覚えるきっかけになったり、仕事の進め方を学ぶ実務の予行演習になったりしている。三井ホームでは『気づきチャンネル』の「士気高揚~ロッキーのテーマ」を退勤時間である18時に流すことで、残業時間が24%減った例も」と齋藤氏は実例を挙げる。
三井ホームでは、終業時刻の18時にロッキーのテーマを流すとともに部署ごとの終礼を実施。社員全員がその場で立ち上がり、業務報告をする。自分の業務が終わっていれば、そのまま退勤になるとのこと。立ち上がることで、再度椅子に座ることを抑制し、帰宅を促す。
人材派遣会社のスタッフサービスでは、社内アンケートの結果から84%がSound Design for OFFICEを導入してよかったという回答が得られた。
「音楽は無形サービスのため、言葉で伝えるのは難しい部分もあるが、きちんと効能を伝えることで、お客様の理解を深めることができる。加えて実体験ができるテスト設置などを提案する」(齋藤氏)という。
利用するにはUSENチューナが必要で、受信方法はフレッツ光またはCSデジタル衛星から選択が可能。月額税別利用料5000円~導入ができる。
施工からメンテナンス、税別月額9000円の「Greenコース」を選べばUSENのBGMコーディネーターが企業の特色や狙いに合わせた放送プログラムを提案、プログラム設定まで手がけるワンストップ体制で、年中無休のコールセンターも完備。万全のサポート体制を敷く。
4つの機能「集中力向上」「リラックス」「リフレッシュ」「気づき」から構成される90ch+ラジオチャンネルを用意。ノー残業デーのアナウンスなど、気づきを促す以外のチャンネルはインストゥルメンタルを多く採用する。これは「人の声は耳に入りやすく集中力を削がれてしまう要因になる」(齋藤氏)ためだと言う。
齋藤氏は「日本で音楽の流れるオフィスはまだ2割程度。ストレスチェックなど働き方に対する関心の高まりもあり、今後数年で倍増も夢ではない。BGMの効能をきちんと伝えていくことで、対応オフィスを増やしていきたい」と今後を見据えた。
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