11月16日、グリーとVRコンソーシアムが共同開催した「Japan VR Summit 2」において、「先駆者から学ぶ~VRアトラクション編~」と題したトークセッションが開催。いわゆるロケーション施設における“体感型VR”の取り組みや可能性について語った。
登壇したのは、10月までの期間限定で運営を行っていた「VR ZONE Project i Can」を手がけたバンダイナムコエンターテインメントAM事業部エグゼクティブプロデューサーの小山順一朗氏と、同AM事業部VR部VRコンテンツ開発課マネージャーの田宮幸春氏。テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)を運営する、ユー・エス・ジェイコンテンツ開発室室長の中嶋啓之氏。テーマパーク「東京ジョイポリス」を運営する、セガ・ライブクリエイション取締役施設事業推進部部長の速水和彦氏。ジャーナリストであり、Tokyo VR Startups取締役も務める新清士氏がモデレーターとして進行役を務めた。
最初のテーマは「VRアトラクションで収益はあがっているのか?」というストレートなもの。小山氏はVR ZONEについて、もともとVRエンターテインメントコンテンツの研究(実験)施設とうたっていたことに触れ、「そこで得られた知見こそが大きな価値であり、収益」と一言。実際には運営していた約半年間、連日全てのコマが予約で埋まりきるほどの大盛況。田宮氏からは「売上の想定は当初の計画よりも大きく上回った」とする一方、人件費についても想定以上にかかったと付け加えた。
「VR ZONE Project i Can」が公開--体感型アーケードゲームの知見が絶叫を引き出す
お台場「VR ZONE」の所長らが語ったVRの知見--“感情”に訴え“体験”を考えるべき
東京ジョイポリスでは、多人数かつケーブルレスで自由に動くことができる“フリーロームVR”のアトラクション「ZERO LATENCY VR」を、国内では初めて7月から導入。速水氏によれば予約もかなり好調で、想定の倍以上の収益があるという。もっとも「東京ジョイポリスという施設の中にあるからこそ、ビジネスとしてうまくいってる」と付け加えた。実際に、東京ジョイポリスには入場料が必要であり、ZERO LATENCY VRについても別途利用料が必要。利用者の館内回遊といったところも含めて、この料金体系だからこそ成功と言える状態であり、単独の施設では非常に厳しいという見方も示した。
自分の足でVR空間を動き銃を撃つ快感--東京ジョイポリス「ZERO LATENCY VR」を体験
USJでは、ヘッドドマウントディスプレイ(HMD)型のVRシステムとライドアトラクションを組み合わせた「きゃりーぱみゅぱみゅ XRライド」を期間限定で稼働。2017年1月からは「エヴァンゲリオン XRライド」を同じく期間限定で稼働予定としている。中嶋氏は、USJ内の数あるアトラクションのひとつとして稼働していたこともあり「単体での効果測定は難しい」と前置きしたうえで、「きゃりーぱみゅぱみゅさんをテーマとしたアトラクションという観点で見れば、成功したと考えている」とした。
中嶋氏はVRライドアトラクションの企画にあたり、「きゃりーぱみゅぱみゅさんを打ち出すか、VRという最新テクノロジを前面に打ち出すかで迷った」と振り返る。テーマパークにおけるアトラクションは、物語や世界観の疑似体験や追体験ができるものであり、ある意味VRで得られる体験に近いものであることから悩んだという。さらに、家庭用向けでもハイエンドなVRシステムが販売されはじめている昨今、家の中ではできない広いスペースを活用したり、体感をともなったりするものがテーマパークにおけるVR体験のあり方ではないかとの考えもあったと振り返る。
今回の企画において意識したのは「エントリーユーザーを取り込むこと」。VRのような最新技術に興味を示すのは、アーリーアダプターの男性が中心。一方でUSJのターゲットは女性や家族と異なっているが、VRに興味があるけれど体験する機会がないというユーザーの入口となって、最初の体験というインパクトがあるものをより良い形で提供するべきと考えた。そして、女性に共感が得られやすく親和性が高いきゃりーぱみゅぱみゅさんの世界観を押し出したVRコンテンツの企画に至ったいう。
ちなみにアトラクションの利用者は、きゃりーぱみゅぱみゅさんの彼女のファンがおおむね半数程度、残りはUSJにほかの目的で来た人が利用したと付け加えた。
ZERO LATENCY VRについて、このシステムは豪州に拠点を持つゼロ・レイテンシーが開発したもので、正式サービス版として導入されたのは東京ジョイポリスが世界でも初めて。速見氏は、いの一番に導入することで話題性や集客につながると判断して導入したと振り返る。もっとも、テスト版で運用していたものは広大なスペースと長時間楽しむものであったため、スペースも時間もコンパクトなものに作り替えたと説明。はじめはVRに興味のあるコアユーザーをターゲットにし、そこからの口コミで一般にも広がっていったという。この流れは狙い通りであったとしている。
フリーロームVRのリーダーシップを取る--豪ゼロ・レイテンシーCEOが抱く野望
VR ZONEにおいては、開設初期にIP(知的財産)を使わないアクティビティを展開。小山氏は、これは来場目的が施設に対してなのかIPに対してなのかがわからなくなるためとし、当初からデバイスや機器の面白さや目新しさでアピールするのもやめていたという。田宮氏も、VRの目新しさで興味を引く時期から、VRだからこれができるという遊び方や体験が求められる時期に移っていると指摘。小山氏も、VRに興味がない人を振り向かせるにはデバイスではなく体験の価値だとして、「さぁ、取り乱せ。」というキャッチコピーのもと、体験者が驚いたり怖がったりする“そのままの姿”をPVにしたという。
田宮氏は、このキャッチコピーやPVを見た人が「本当かよ?」と疑問に思う気持ちも狙いであり、それを確かめたいという気持ちが足を運ばせる力にもつながったと説明する。
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