米国民は「サイバー」の心配をすべきだろう。
シリアル起業家で億万長者のDonald Trump氏が、米国時間11月8日の選挙で共和党所属の次期大統領の座を獲得した。次の米大統領として、内政と外交、経済再建、老朽化した産業基盤の修復、大規模な米軍の統括などに従事することになる。
そして、任務として重要性を増しているのは、サイバーセキュリティとサイバー防衛だ。
米当局は大統領選挙当日にサイバー攻撃を受ける可能性が高いと警告したが、実際には何も起きなかった。だが、それで終わりではもちろんない。
米国はここ数年、さまざまなサイバー攻撃の痛手を受けている。2014年のSony Pictures Entertainment(SPE)への国家支援の攻撃や、最近では米連邦政府人事管理局への、さらには10月のDNSサービスプロバイダーDynへの攻撃などだ。Dynへの攻撃の結果、膨大な数の米国民が使う多数の人気ウェブサイトがダウンした。
間違いなく攻撃は今後さらに増え、その手法はあくどくなる一方だ。
Forrester Researchが11月9日に発表したリポートによると、Trump氏は大統領就任後100日以内に「サイバー危機」に直面することが、ほぼ確実という。政府だけでなく、私企業もこの危機に備える必要がある。
だが、Trump氏が来るべきサイバー攻撃の脅威とどう戦うのかは誰にも分からない。Trump氏のサイバー危機とは、同氏が対処方法を知らないこと自体なのかもしれない。
それは問題だ。
Trump氏のサイバーセキュリティポリシーは脆弱で“危険なほど漠然としている”。同氏の公約の、サイバー防衛の見直しや政府全体でのサイバー意識の強化などは表面的には分かりやすく聞こえるが、大統領候補同士の討論会での同氏は、ライバルであるHillary Clinton氏が公的なメールに私有サーバを利用した事(2度にわたる調査で、犯罪には当たらないとされた)を攻撃するのと、10歳になる息子がいかにコンピュータに詳しいかを自慢することに忙しすぎた。
討論会の司会を務めるNBCのLester Holt氏がTrump氏にサイバー攻撃とどう戦うか尋ねたところ、Trump氏は次のように語った(他にもいろいろと):
「サイバー戦争には非常に、非常に、断固とした態度で臨む必要がある。これは重大な問題だ。私には10歳になる息子がいて、コンピュータを持っている。息子はコンピュータが非常に得意だ。信じられないくらいにね。サイバーのセキュリティ面は非常に、非常に、厳しい。そして恐らく、守るのは非常に難しいだろう。だが、われわれはやるべき仕事をやっていないと思う。これは政府全体に言えることだ。もっとうまくやるべきことがあまりに多い。サイバーはその中の1つだ」
つまり、同氏は自分が何について話しているか分かっていないのだ。あるいは、もし分かっているとしても、具体的な方策は説明していない。
米国は、メールの情報漏えい、政治的意図によるハッキング、主要なインフラを数時間にわたってダウンさせる大規模な分散型サービス拒否(DDoS)攻撃、そして言うまでもないが、サイバースパイや知的財産窃盗などの脅威にさらされている。
それにもかかわらず、米国はハッキングやスパイ行為とどう取り組むかを語らない人物を大統領に選んだ。同氏は、国家によるスパイ行為を奨励しさえした。同氏がメディアへの「1人DDoS攻撃」と呼ばれるのも無理はない。AdvertisingAgeによると、メディアに虚偽や誤報を大量に浴びせかけ、「フリーズ、崩壊させる」のだから。
Trump氏自身が来るべき試練の時にフリーズしないことを願う。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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