三菱地所のベンチャー支援施設「GBHT」--“老舗エリア”を選んだ理由 - (page 2)

GBHTに入居している企業の声は

　それでは、GBHTに入居しているベンチャー企業は、GBHTをどのように評価しているのか。実際に入居している2社に、ベンチャー企業が大手町にオフィスを構える意義などを聞いた。

ウエルネスデータ代表取締役の星野栄輔氏

　1社目は、ヘルスケアサービスを提供するウエルネスデータ。同社は、ヘルスコーチアプリ「JouleLife」を提供している。一般的なヘルスケアアプリでは、身長と体重などから1日の活動量を計測するが、定期的にワークアウトする人と、インドア派の人では筋肉量と内臓脂肪量に大きな開きがある。こうした違いを考慮したアドバイスを提供しないと「毎日1万歩歩いているのに体重が変化しない」といったことが起こってしまうという。

　JouleLifeは、性別、身長、体重、体脂肪率を入力し、目標とする体重、体脂肪率の組み合わせと目標達成までのペースを選択。また、ヘルスケアアプリを使用する際に足かせとなっていた毎日の食事の記録も不要で、現時点での体重をたまに入力するだけ。また、ダイエットに必要なアドバイスを1日に4回ほど通知することで、目標達成を支援する。

　職場のセキュリティ的にスマートフォンを持ち込めなかったり、プールなどデバイスが壊れてしまう環境下でもアプリ側で運動量を簡単に登録して把握できる点も特徴であるほか、健康診断の結果からのスコアリングにも対応。医療機関で受診した健診データを、医療機関から直接取り込めるような連携も開始している。

　ウエルネスデータ代表取締役の星野栄輔氏によると、同社はもともとEGG JAPANにオフィスを構えていたことがあり、「もう少し使い勝手が良いところがある」と三菱地所からGBHTを紹介されたという。また、同社では、特許相談などを新丸の内ビルに構える事務所へ委託しており、法務顧問、知財顧問のほか、ヘルスケアに特化したファンド、フィナンシャルアドバイザーもオフィスから近く、気軽にアクセスできるという。

　営業面でも、健康経営に取り組む事業者が丸の内や大手町エリアには多く、そうした企業へのアプローチがしやすいほか、三菱地所が関心のありそうな企業とマッチングさせることで、ビジネスの幅も広がるとしている。そのほか、GBHTに入居している44社との繋がりが持てることも一つのメリットだとしている。

DatoramaJapan代表取締役の布施一樹氏

　もう1社は、マーケティングデータ統合プラットフォームを展開するDatorama Japan。企業内に分散しているさまざまなレイヤーのマーケティングデータを集積・統合し、マーケターなどが最適なマーケティング施策を判断・実行するために必要な情報を一括管理し、可視化し迅速な分析を可能にするダッシュボードを提供している。「Yahoo!プレミアムDSP」の顧客向けデータドリブンインサイトの分析基盤にも採用されている。

　同社では、事業会社のマーケターや広告代理店、メディア企業からの引き合いが多 いという。広告に関わるデータはここ最近肥大化しているものの、それを管理するツ ールがExcelであるケースは多い。これは世界共通の話で、同社代表取締役の布施一樹 氏によると、分析業務の8割の時間が準備に費やされており、携わる人件費やツールで 想像できないほどのコストが発生しているという。

　Datoramaの統合ダッシュボードにより、リアルタイムに必要な情報を見ることができるため、分析準備業務の負荷が大幅に下がり、分析自体に注力可能になるという。

　同社は米国に本拠地を構えており、2015年4月に日本法人を立ち上げている。当初はEGG JAPANに入居していたが、GBHT開設と同時に移転した。大手町は、同社のクライアントであるメディア企業や広告代理店などのクライアントが徒歩圏内に多く、アクセス性に優れているという。

　また、同社では今後ファンのコミュニティ作りを目指している。布施氏は「ウェブのコミュニケーションが基本なの で、良い話、悪い話含め伝達スピードが早い。そういったウェブならではのスピード の魅力と怖さがありつつ、同じ空間、同じ空気を吸ってコミュニケーションを取るイ ンタラクティブな機会も重要」だと指摘する。そのため、「オフィス環境の中に、低コストでコミュニティ作りやワークショップを行う場が提供されるのはありがた い」とし、GBHTが持つイベントスペースの有用性を語った。