マネーフォワードは10月5日、みずほフィナンシャルグループと新たに業務提携契約を締結し、三越伊勢丹グループとの業務提携の検討を開始したと発表した。
また、みずほキャピタルが運営する「みずほ FinTech ファンド」と、三越伊勢丹イノベーションズ、既存株主であるFenox Venture Capitalのほか、東邦銀行、北洋銀行、群馬銀行、福井銀行、滋賀銀行などを引受先とする第三者割当増資を実施。金融機関からの借入も含めて総額11億円を調達している。
今回の業務提携により、「FinTechの要」とも言えるサービス間のAPI連携を強化。また、マネーフォワードの個人・法人向けサービスをみずほの顧客に展開するほか、新サービスの共同開発、PFM(Personal Financial Management)領域でも協業する。三越伊勢丹とは、カード事業や百貨店事業の顧客に、PFMサービスを組み合わせる予定だ。
みずほとは2015年より、複数のサービスで連携を実施している。マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介氏によると、「借り入れも含め、みずほはベンチャーにサポ―ティブ」だという。今回の提携も両社乗り気での実現だったようだ。
三越伊勢丹のスタートアップへの投資はマネーフォワードが2件目で、ベンチャー企業との協業を活発化させている。同社はクレジットカード事業と百貨店事業を有しており、富裕層の顧客を多く抱えている。PFMサービスとの連携、Eコマースのデータ分析・活用の方面でマネーフォワードのテクノロジを利用する。
両社とも膨大な顧客ベースを持っているものの、テクノロジとデータを結びつけてユーザーに届けるプラットフォームが十分ではないとの認識があるようだ。こうした課題は多くの企業が持っており、辻氏は「さまざまな会社と提携しているが、最近ではヤマト運輸と提供している請求書サービスが伸びている。いろいろな会社と(マネーフォワードのサービスとの)相性が良く、驚いている」と話す。
マネーフォワードでは、地方銀行を含めた金融機関との連携も活発化させている。背景には、金融庁の金融レポートにおいてFinTechがクローズアップされたほか、日銀のFinTechセンター設立や経産省での取り組みなど、国の積極的な支援もあり、銀行側のマインドが変わってきたことも影響している。
活発化するFinTech領域だが、日本は海外と比べて大きく後れを取っている。辻氏によると、FinTechにおける投資額では日本は米国の100分の1程度。米国では、新しいサービスを受け入れるユーザーの母数が多いほか、既存の金融システムへの不信感が高いこともあり、数多くのFinTechベンチャーが出現している。中国でもレンディングビジネスが急速に伸びているという。
辻氏は「Apple Payの日本上陸など、決済でもスマートフォンと同じく海外企業に押さえられる可能性がある。国外で通用するモデルがない中、日本の金融システムがどのように発展していくかは大きな課題」と危機感を募らせる。一方で、今後シュリンクが想定される国内市場だけでなく、ゆくゆくはアジアへの進出も検討しているという。ただし、各国で金融システムが大きく異なることもありローカライズは必須。開発リソースも含め一筋縄ではいかないようだ。
マネーフォワードでは、「お金の課題をテクノロジで解決する」というビジョンを掲げている。辻氏は、「FacebookやGoogleを見ていると、広大なオフィスに加え、労働環境や給与面もとても良い。それができるのは、ビジネスモデルがあって一人あたりの収益率が圧倒的に高いから。日本でも、既存の仕組みを変えて一人あたりの生産性を上げ、給料を出せる国にしないと沈没してしまう」と、ビジネスを効率化する必要性を説いた。
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