大きく政治問題化された議論に終止符を打つ動きとして、米政府は米国時間10月1日、インターネットを掌握する権限を手放し、DNSの管理権限をInternet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)に移管した。
共和党のTed Cruz上院議員らは、仮想空間における言論の自由が危機に瀕していると主張し、移管の阻止を試みていた。米連邦判事は9月30日、Cruz議員らの差し止め請求を退け、予定されていた移管は深夜に実現した。
何年もかけて進められてきた計画のもと、米商務省はDNSの監督権限を非営利団体のICANNに移管した。ICANNの関係者には、技術的専門家に加えて、政府や企業の代表が含まれる。
Cruz氏をはじめとする反対派陣営は、移管によって独裁的な国家がインターネットを支配し、いずれは世界中でコンテンツを検閲することにつながると主張していた。
ICANNは、そうした懸念には根拠がないと述べた。
移管の支持派は、移管を阻止すればむしろ、インターネットにおける米国の影響力が弱まる可能性があるとも主張した。
ロシアや中国などは、目立たない存在の国連機関である国際電気通信連合(ITU)にインターネットガバナンスの任務を与えるという考えを支持していた。そうなれば各国政府が管理権限を得ることになるが、米国など技術大国の相対的重要性が低下することにもなる。
アリゾナ州、ネバダ州、オクラホマ州、テキサス州の検事総長らは9月28日、移管を阻止するために訴訟を起こした。テキサス州南部地区連邦地方裁判所の判事は、暫定的差し止め命令の請求を退けた。
ICANNは10月1日、移管によってオープンインターネットが保証されると述べた。
ICANNの理事長を務めるStephen D. Crocker氏は、声明で次のように述べている。「この移管は18年前に構想されたが、これを実現したのは、最終提案をまとめたグローバルなインターネットコミュニティーによる不断の努力だ。このコミュニティーは、インターネットガバナンスのマルチステークホルダーモデルを実証した。企業、研究者、技術的専門家、市民社会、政府など多くの人を含むすべての声を包括することで定義されるガバナンスモデルが、明日のインターネットを今日のインターネットと同じくらい自由でオープン、かつ利用しやすいものであり続けることを保証する最善の方法であることを示した」
Facebook、Google、Microsoft、Verizonなど大手ハイテク企業が加盟する業界団体Internet Governance Coalitionは、9月30日の声明で次のように述べた。「強力な説明責任の施策を盛り込むと同時に、われわれが今日体験するオープンインターネットの本質を実現しているボトムアップのアプローチを支える計画が、これまで実施されてきた。これは移管プロセスにおける重要な一歩だが、ICANNの説明責任と透明性を確保するには、まだやらなければならないことがたくさんある」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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