旅行の荷物を詰めるとき、筆者は少なくとも3種類のケーブルを用意しなければならない。iPhoneと「iPad」を充電するためのLightningケーブル、外付けのハードディスクに使うUSB-Cケーブル、そして「MacBook Pro」にディスプレイをつなぐための「Thunderbolt」ケーブルだ。それでも、いざとなるとケーブルが足りなくなることも珍しくない。
「Thunderbolt 3」から、IntelはUSB-Cコネクタを採用した。筆者はそれを知って飛び上がらんばかりだった。すべてのThunderbolt 3ポートがUSB-Cポートとして機能するようになり、USB-CとThunderbolt 3ケーブルすべてが互換性を持つようになる。新型iPhoneにもUSB-Cコネクタが採用されていれば、USB-Cケーブルを何本か持ち歩くだけで済んだのだが。
なにより、もうアダプタにはうんざりではないだろうか。小さくて紛失しやすく、いつだって見当違いな場所にある。いつも持ち歩かなければならず、机の上が散らかる原因にもなる。そうした不便さを一掃するには、USB-Cに移行するしかない。
「1つのポートがすべてを統べる」という発想は、とっさのときにも役に立つ。デバイスを充電しようとして、ケーブルを探し回ることもなくなるだろう。友人にケーブルを借りる必要もなくなるかもしれないし、借りるとしても、すべて同じケーブルなので、必要なケーブルを友人が持っているはずだ。
新型iPhoneがUSB-Cを採用していれば、ケーブルをめぐる悩みはすぐに解消されただろう。
現実に目を向けよう。新しいiPhoneは、ヘッドホンジャック廃止に対する不満があろうとなかろうと、ほぼ間違いなく膨大な数が売れるはずだ。ということは、Lightningケーブル、Lightningからオーディオ用の変換アダプタ、Lightningヘッドホン、サードパーティー製アクセサリも売れに売れるだろう。最終的には、それがすべて電子ゴミになって、埋め立て地をいっぱいにすることになる。
iPhone 7がUSB-Cに対応したとしても、やはりケーブルやアダプタ(USB-Cからオーディオ)は必要だという意見もあるだろう。そのとおりだ。だがその場合、ケーブルとアダプタは他のUSB-Cデバイスに付け替えて使うこともできる。Appleデバイス用に1セット、Apple以外のデバイス用に1セットと、ケーブルやアクセサリを2セットそろえる必要はない。また、新たに登場するUSB-Cデバイスにいつでも使えるので、ケーブル(とアクセサリ)を長く所有することになる。USB-Cデバイスは2017年以降に増加の一途を辿るだろう。
Appleはこれまで、環境に配慮する企業という主張を前面に打ち出している。であるなら、廃棄物や天然資源利用の削減につながるユニバーサルなコネクタ標準を採用しない理由はないはずだ。
AppleのPhil Schiller氏はiPhone 7の発表イベントで、ヘッドホンジャックの廃止は「勇気のいる」決断だったと語った。果たしてそうだろうか。ヘッドホンジャックを廃止しておきながら、Lightningコネクタを残したのは、完全にプロプライエタリ路線をとり、コントロールをさらに強化して、最終的にはもっと利益をあげようという意図の表れだ。前述のMFi認定のことを思い出してほしい。Appleは、iPhone 7とiPhone 7 Plusに接続される文字どおりすべての機器から、ライセンス料を得ることになる(正規のアクセサリに限ってだが)。これでは、「勇気」というより「貪欲」と感じられる。
だが、プロプライエタリの方向に進むことは、企業の衰退につながる可能性もある。かつてエレクトロニクス業界でその名をはせたソニーも、それが一因で、10~20年前ほどの存在感を失ってしまった。同社は、映画や楽曲をCDやDVDですでに所有している人でも、「MiniDisc」や「UMD」で(そして、おそらくメモリスティックでも)買い直す必要があるという主張を押し通そうとしていた。これを覚えている人もいるだろう。
だが、筆者が間違っているのかもしれない。Tim Cook氏は、2017年モデルのiPhoneのために、USB-Cを先送りにしようと判断した可能性もある。
だが、次はもうUSB-Cの採用に賭けるつもりはない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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