Airbnbは、臨海副都心J地区(東京都江東区)にて開催中のイベント「HOUSE VISION 2016 TOKYO EXHIBITION」において、建築家の長谷川豪氏との合同プロジェクトとして「吉野杉の家」を公開している。
HOUSE VISIONは、多くの建築家、企業が「新しい住まいのかたち」を具体化するためのプロジェクト。Airbnbをはじめ、トヨタ、三越伊勢丹、無印良品、パナソニック、凸版印刷、TOTOといった、さまざまな企業が参加し、12のコンセプトハウスが一同に集結する。ディレクターは、建築家の原研哉氏が務める。開催期間は8月28日まで。
Airbnbが「家」についての考え方を提示するのは今回が初の試みとなる。グローバルで貸し部屋サービスを手がける同社が、自ら“理想の家”を建てた理由について、Airbnb共同創設者のジョー・ゲビア氏に話を聞いた。
実は、Airbnb内に「Samara」という新しいデザインスタジオを立ち上げました。このスタジオは、HOUSE VISIONのようなコンセプトハウスをデザインするためのユニットで、立ち上げたばかりの完璧なタイミングで原研哉氏から出展のお誘いをいただきました。
吉野杉の家を作るにあたり、ゲストとホストの将来の関係について、建築家の長谷川豪氏とブリーフィングを実施しました。ホストとゲストという互いに知らない者同士が、建築を通してどのようにつながるかを具体化したかったのです。10年前にさかのぼると、知らない人に家を貸すという発想は考えられないものでした。もともと家というのは、他人が泊まるような目的で作られていません。ですので、そうした目的で最初から家を建てることにしたのです。
デザインする過程でいくつかの気づきがありました。まずは、日本の問題についてです。日本の高齢化が進むことでさまざまな問題に直面しており、地方都市も規模が縮小傾向にあります。日本以外の国でも、今後10~20年で同じような高齢化の問題が顕在化するでしょう。もう一つは、村や町の中でのコミュニティセンターの重要性です。村が健康的に活性化するためには、住民の方々が集まる場所がとても大事だと分かったのです。
そのほか、地方で十分な影響力を与えているAirbnbのホストの存在もありました。とある村に住む女性のホストは、自身の寝室をAirbnbに登録しました。当初、村の人の反応は「なぜそんな馬鹿なことをやるのか」「こんなところに来たい人がいるのか」といったものでした。しかし、Airbnbに登録するということは、191カ国のユーザーが見ることになるのです。こうしたユーザーは、日本の地方都市に興味があり、実際に世界中からさまざま人が来るようになったのです。
まずは、村の人が彼女の手伝いをはじめたのです。料理であったり、翻訳の手伝いをするようになりました。次に、村に経済的な刺激が生まれたほか、うれしいこと、わくわくするようなことが村に起こったと聞いています。
そのため、今回「吉野杉の家」を作る際に、“本物の家”として設計しました。コミュニティセンターと、Airbnbが合体するとどうなるでしょう。ゲストが宿泊するところで村の人とも交流できます。また、その土地での経験が得られ、まるであたかもその村に住んでいるような気分になれるのです。
こうした状況に近づけるためには、その町のローカルで住む人とつなげてしまうのが一番早いのです。今回、お手伝いが必要だという村を見つけることができました。それが奈良県の吉野だったのです。吉野には、木に関するさまざまな職人の技が存在します。今回のプロジェクトも好意的に捉えていただいており、HOUSE VISIONでの展示が終わり次第、吉野杉の家は吉野の土地に寄贈され、2016年の11月から実際に宿泊することができます。
今後1年間程度、吉野杉の家によって吉野がどのように変化していくか追跡する予定です。吉野を助けることによって、このモデルが吉野以外の日本の都市にも貢献できるのではと考えています。
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