小さいから高音質--極小、超軽量イヤホンfinal「F」シリーズ開発の裏側

 オーディオブランド「final」の歴史は長い。創業はオーディオブーム真っ只中の1974年。アナログレコードプレーヤーのカートリッジからスタートし、その後、アンプ、スピーカまでオーディオ製品を拡充。当時はユーザーに直接販売する形でビジネスを展開していたという。

 現在のイヤホン、ヘッドホン販売を開始したのは2009年。新会社S’NEXTとして、finalブランドの開発、販売をする一方、ドライバユニットの設計まで手掛け、OEM、ODMメーカーとしても知られる。

「最小、最軽量を目指したわけではない」

 そのfinalが7月15日に新「F」シリーズを発表し、7月16日の「ポタフェス2016」内でイベントを実施した。Fシリーズは、「F7200/F4100/F3100」の3モデルをラインアップし、本体重量約2g、本体直径5.5mmの超軽量、小型を実現。「着脱式イヤホンの中では現状最小、最軽量」(S’NEXTの松永輝人氏)のコンパクトサイズが特徴だ。

左から「F3100/F4100/F7200」
左から「F3100/F4100/F7200」

 コンパクトな見た目ながら、上位機F7200/F4100には、MMCX端子によるケーブルの着脱を実現。3機種すべてにフルレンジのバランスドアーマチュアドライバを搭載する。

 「最小、最軽量を目指したわけではなく、音質を追求した結果、この形になった。人間の耳の形は大きさや長さが異なり、大きなサイズだときちんと装着ができないケースもある。その部分を解消するため、小さく軽くして、満足してもらえるような装着感にした」と松永氏は、Fシリーズの超軽量、小型を採用した理由を明かした。

 コンパクトな筐体はきちんと耳の奥まで装着することで、鼓膜にダイレクトに音が伝わり、高域のきつい部分を緩和できるメリットも得られる。耳の奥まで入れられるため遮音性も上がる。

 しかしこのコンパクトサイズは一朝一夕で生み出されたものではない。finalの川崎にある本社は、1階が自社工場、2階が事務所という製造、開発、販売などの部門が一体となった構造。工場内では、ミリ単位での調整が日々続いたという。

左からfinalブランドの現行モデル「Heaven V」、「F7200」の筐体と1円玉の比較。F7200がいかに小さくなっているかがわかる
左からfinalブランドの現行モデル「Heaven V」、「F7200」の筐体と1円玉の比較。F7200がいかに小さくなっているかがわかる

ケーブル、仕上げ、つなぎ目にも及ぶ究極のこだわり

 F7200/F4100の上位2モデルがケーブル着脱式で、上位機のF7200のみステンレス筐体を採用したほか、オリジナルの高純度OFCシルバーコートケーブルを使用する。

 OFCシルバーコートケーブルは、スーパーコンピュータ「京」用のケーブルを開発、製造している潤工社との共同開発品で、絶縁被膜にはPFAテフロンを使用。外皮にはPVCを採用することで、柔軟性を高めたという。通常であればくせが強く、釣り糸のような素材を「伝送速度を下げず柔らかくすることで、扱いやすくした。製造の際、熱を使用すると固くなってしまうため、熱を使用せずに作っている」(松永氏)とのこと。

 耐久性にもこだわり、プラグを90度左右に曲げる屈曲試験では、一般的に5000回でクリアと言われている中、5万回のテストを実施した。

 また“finalらしい”美しい筐体の仕上げもF7200の大きな特徴の1つ。finalの販売代理店を務めるJの森圭太郎氏は「つなぎ目さえも美しくとのこだわりから、ハウジング部は一度組み立ててから磨き、その後外して再度組み立てることで、滑らかで美しい仕上がりにした。通常はパーツごとに磨き、組み立てる工程にすることが多いが、組み立ててから磨く工程を1つ増やすことで、仕上がりが違ってくる」と、仕上がり工程の一部を紹介した。

 F7200は完全日本製となっており、最終品はすべて人間の目でチェックしている。

 イベントに登壇したオーディオライターの野村ケンジ氏は「小さくて、軽いというのはイヤホンにとってうれしいこと。しかし小さいながらも音は手抜きではなく、さすがだなと思う。このイヤホンはイヤーピースのサイズを変えることで、鼓膜からイヤーパッドの位置を調整できるので、融通がきくという意味でも素晴らしい」とコメントした。

  • ステンレスの鏡面仕上げを採用したF7200

  • ケーブルは高純度OFCシルバーコートケーブル

  • F7200は完全日本製となっており、最終チェックすべて人間の目で行っているという

イヤーパッドのサイズによって装着位置を変更可能
イヤーパッドのサイズによって装着位置を変更可能

 市場想定税込価格はF7200が4万9800円、F4100が2万9800円、F3100が1万9800円。税込販売価格62万9000円のヘッドホンプレステージモデル「SONOROUS X」までをラインアップしているfinalブランドであることを考えると、「かなり攻めた価格設定した」(森氏)とのコメントもうなずける。

 F4100/F3100は、筐体にアルミニウムで、ブラックアルマイト仕上げ。オリジナル高純度OFCブラックケーブルを備える。F3100はケーブルの着脱はできないが、絡みにくいよう溝を施すなど、取り回ししやすい工夫が凝らされている。すでに、展示会などで参考出品しているが試聴した人は「F7200よりもF4100が好きという人もいて、好みは分かれる。価格的な部分も大きいが音の差もあるので、ぜひ聴いて好きなものを選んでほしい」(松永氏)と言う。

 野村氏も「F3100の1万9800円の値付けはかなり意欲的。人にすすめやすい価格帯でもある」と話す。

 本体には、シリコンタイプ5サイズ、フォームタイプ3タイプのイヤーピースを付属したほか、イヤーフック、キャリングケースを同梱。キャリングケースは、ケーブルを巻いて収納できるデザインで、シリコンの1枚シートからできている一体成型。森氏は「プラグと筐体を同じ場所に収納すると、擦れて傷になる可能性があるため、別々に巻き取りながら収納できる形にした。耐久性も高い」とキャリングケースのこだわりも話す。なお、ケーブルに関しては別売で販売する予定としている。

  • シリコン製のキャリングケースは新設計。上部に筐体を収納でき――

  • 下部にはプラグ部を収納。プラグが筐体を傷つけてしまうリスクをなくしている

  • サイドにはケーブルを巻きつけて収納できる

「ポタフェス2016」で開催されたイベントの様子。左から野村ケンジ氏、e☆イヤホンの西亮太氏、S’NEXTの松永輝人氏、Jの森圭太郎氏
「ポタフェス2016」で開催されたイベントの様子。左から野村ケンジ氏、e☆イヤホンの西亮太氏、S’NEXTの松永輝人氏、Jの森圭太郎氏

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