NTTドコモ・ベンチャーズは6月3日、ベンチャー企業とNTTグループによる協業の事例や、ベンチャー企業支援の取り組みなどを紹介するイベント「NTTドコモ・ベンチャーズ Day vol.2」を開催した。国内だけでなく海外のベンチャー企業やベンチャーキャピタルも招き、プレゼンテーションやパネルディスカッションが実施された。
両社によるベンチャー企業支援は2013年から本格化し、2014年にはNTTグループとベンチャー企業のアセットを融合した新たなサービスの創出を目指す「Villageアライアンス」を、2016年の3月には社会課題の解決を目指すベンチャー企業を支援する「Villageソーシャル・アントレプレナー」立ち上げている。こういったベンチャー支援の取り組みは、どのようなシナジーを生み出しているのだろうか。イベントでは、協業事例として3社が紹介された。
まず登壇したのは、薬局向けの電子薬歴管理システムを開発するグッドサイクルシステム。医師が発行した処方箋に対して、薬剤師が患者の服薬履歴や副作用の有無、ジェネリック医薬品の使用意向などを確認した上で、適切な調剤を支援するシステムを薬局チェーンなどに提供している。
ドコモとの協業では、この薬歴管理システムをドコモが展開する電子お薬手帳とクラウド経由で接続。薬剤師が入力した処方薬の情報を患者が電子お薬手帳で確認できる仕組みを作り、患者が自分で処方薬の情報を入力する手間を省いたという。
ドコモ執行役員でライフサポート推進部長の村上享司氏は、通信サービスだけではない、顧客にとっての付加価値を外部企業との“協創”によって創り出していくという、従来からの姿勢を紹介した上で、注力分野のひとつである医療・ヘルスケア事業のこれまでの展開について説明。
なかでも、2012年に開始した電子お薬手帳のビジネスは順調に拡大しているという。薬局チェーンにカスタマイズした電子お薬手帳だけでなく、中小規模の調剤薬局でも利用できる汎用的な「おくすり手帳Link」を開発し、2500店舗を超える薬局が導入している。「2016年に診療報酬が改定され、4月からは電子お薬手帳を薬局に提示した場合には医療費が安価になるため、電子お薬手帳に対する関心は高まっている」(村上氏)。
村上氏は協業にあたり期待したことについて、「まだまだノウハウが少なく課題も多い医療分野のビジネスをどのように伸ばしていくか、電子お薬手帳のビジネスをどう成長させるかという中で、ユーザー(患者)に操作を強いる煩わしさを、システム連携によって簡単に解決できるのではないかと考えていた。ちょうどそのタイミングで、薬局向けシステム開発のノウハウや実績があり、薬局とのリレーションも深いグッドサイクルシステムと協業することで、電子お薬手帳の価値が高まることを当時に期待した。加えて、グッドサイクルシステムは薬局チェーンへのパイプが太いため、営業面でも連携できるのではないか」とコメント。協業開始当時は、まずはドコモの担当者がグッドサイクルシステムの営業に同行し、さまざまなことを勉強することから始めたのだという。
一方、グッドサイクルシステム代表取締役の遠藤朝朗氏は、「私たちの本業はBtoBのビジネスであり、コンシューマ向けの製品についてはセンスがない。また薬局側からは“患者にサービスを勧めるのであれば、信頼性の高いものを紹介したい”という声が多く聞かれ、ドコモとの協業には期待する意見が寄せられた」とコメント。村上氏も「協業による利便性向上に対する反響は非常に良く手ごたえを感じている。採用を決めた薬局チェーンもいくつかあり、今後世の中に提供される予定だ」と続けた。
「制度改正や日本の医療課題などを背景に、この分野には追い風が吹いている。今後は薬局が担う役割はますます大きくなり、掛かりつけ薬局と地元の患者とのパイプの太さが問われるようになっていく。その中で、電子お薬手帳は服薬管理だけでなく薬局・薬剤師と患者とのメディカルコミュニケーションを、 さらに太くするための新たな価値を創造できるのではないか。そういう思想のもと、このサービスを進化発展させていきたい」(村上氏)。
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