Properは6月6日、ご近所SNS「マチマチ」の正式サービスを開始した。3月から渋谷区限定でテスト提供を開始していたが、手ごたえを感じて地域を全国に拡大した。これに合わせて、投資ファンドのANRI、BEENEXT、個人投資家などから6000万円の資金を調達した。
マチマチは、自宅から半径800m以内に住んでいるユーザーと、自分が住む町の情報交換をしたり、コミュニケーションしたりできるサービス。安全を担保するために、サービス利用開始時に免許証などによる住所確認をしており、半径800mを超えた町に住んでいるユーザーの投稿は見ることができない。また、利用するには実名登録する必要がある。
利用用途としては、地元のおすすめの病院やスーパーを尋ねたり、保育園や小中学校など、オープンなサイトではなかなか手に入りにくい情報の交換などを想定している。また、自治体による防犯・防災情報、地震など有事の際の助け合いのツールとしての活用も期待しているという。
マチマチではサービスの品質を保つために、その町にネットワークのある人をリーダーに採用する制度を導入している。サービスに登録後、同じ町で住所確認した人を3週間以内に5人以上集めることがリーダーの条件で、集まらなかった場合はその町のマチマチは一旦閉鎖される。別のユーザーがまた5人集めた場合に、復活するという仕組みだ。
マチマチは、メガネのECサイト「Oh My Glasses(オーマイグラス)」のCOOを務めていた六人部生馬氏が、地域コミュニティの衰退に危機感をもち立ち上げたサービスだ。海外では米国の「Nextdoor」を始め、地域コミュニティSNSのユーザーは増加傾向にあり、企業価値も高まっているが、日本にはまだそういったサービスで成功しているものは少ない。
「Facebookなどの『友だち』、LinkedInなどの『仕事』、Instagramなどの『興味関心』の次は『地域』のSNSがくると言われている。たとえば警察や住人が、『この町に不審者や危険な動物がいる』といった注意喚起ができる。また、おすすめのリフォームやベビーシッターのマッチング、パブリックWi-Fiの情報なども、その町の人だけで交換できる」(六人部氏)。
同氏は、渋谷区でのテスト提供で、住人にとって有用な情報が投稿されるようになってきたことから、正式サービスの提供を決めたと説明する。たとえば、引っ越してきた人がおすすめの歯医者を聞いたところ回答がついたり、投稿された地元の飲食店の情報をみた他のユーザーが、その店舗を訪れたといった事例があったという。ユーザー数は非公開だが、約6割が2日に1度はサイトにアクセスしているという。
とはいえ、実名制で半径800mのコミュニティとなると、やはり気になるのが住所特定による、嫌がらせやストーカー被害などだ。この点については、「丁目」までしか公開されないほか、常に同社の監視チームが投稿をチェックすることで安全性を担保するとしている。また、マルチ商法や政治、商業的な投稿は排除しているとした。
今後は調達した資金によって、全国地域の行政や自治体との連携を強める。「自治体にも町内会などはあるが、FacebookなどのSNSではなかなか住民に届きにくい。また、防災のほかアンケートなどにも役立てられる」(六人部氏)。現在はウェブサイトのみのためアプリも開発中。また、半径800mという範囲も都心と地方では人口密度が違うため、カスタマイズできるようにする予定だという。
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