樫尾俊雄記念財団は「樫尾俊雄発明記念館」の時計の展示を全面刷新 し、「時の記念日」である6月10日より一般公開する。
一般公開に先駆けてプレス向けに説明会を開催し、カシオの時計事業の現状についてカシオ計算機 取締役 専務執行役員 時計事業部長の増田裕一氏が語った。
カシオは1974年~2003年まで、世界初のオートカレンダー付き時計や脈拍測定機能を搭載したもの、音楽プレーヤーやデジタルカメラ機能など多機能なデジタル時計を数多く手がけてきた。
「最初の30年は多機能デジタルを中心にやってきた。正直、アナログのマーケットをデジタルに変えてしまおうとやってきた。しかしなぜデジタルに変わらなかったのか。いろいろな機能を入れたが、本当に必要な機能が見つからなかった。必需機能が見出せなかったからだ」と振り返った。
これは、現在のスマートウォッチも同じ状況にあると増田氏は見る。「スマートウォッチがなかなか広がらないのは、まだ必需機能が解決できていないから。機能好きの層にとどまってなかなか本流の消費者層に入っていかない理由だと思う」と述べた。
iPhoneの登場以降、スマートフォンが広がりデバイスは小型化した。「異業種の参入が容易になりコモディティ化すると、どこが作っても似たようなものになる。今のスマートウォッチ、フィットネスデバイス、スポーツウォッチはデジタルウォッチの進化版」と分析する。
カシオは、事業開始から30年を経てもG-SHOCKブームを除けばデジタル時計の売上げは700~800億円止まりだったとし、2004年からアナログ時計の高機能化にシフト。5モータードライブ、針位置検出、自動補正など独自のアナログムーブメント技術と、カシオがもともと得意とする電波ソーラーやGPSハイブリッド電波、スマートフォンリンクを組み合わせ、「世界どこにあってもつねに正確な時刻を提供する」という“高機能アナログ戦略”を打ち出した。
これは、スイスブランドをはじめとする伝統ある時計のブランドに対する差別化でもある。「1分1秒を追いかけているのは日本だけ」と海外のメディアから言われることもあるというが、対照的な価値観で明確に差別化し、新たなセグメントを切り開いていく考えだ。
カシオは2014年9月、スマートフォンとの連携により、 世界各地でのワンプッシュ自動時刻修正や300都市対応のワールドタイムをはじめとした簡単時計設定ができる「EDIFICE(エディフィス)」シリーズ「EQB-500」を発売した。なぜ時計とスマートフォンをリンクするのか。多くの人に普及しているスマートフォンを利用することで、手軽で安価に正確な時刻をグローバルに提供できるという。
カシオには、正確な時刻を表示する機能として、世界6局の標準電波を受信できる「電波時計」と、電波時計とGPS衛星からの時刻受信ができる「GPSハイブリッド電波時計」のラインアップがあるが、電波時計は受信エリアが日・欧・米・中に限られること、屋内・屋外の受信にも対応できる一方で、ラジオのように環境によって受信状況が変わる問題点があるという。「環境が悪いと受信しにくく、環境が良すぎてもハワイやタイで日本の電波を拾ってしまい困ることがある」(増田氏)
一方でGPSは、砂漠の真ん中でも受信でき、グローバルに対応できるが屋内では受信しにくく窓ぎわなどに移動する必要がある。さらにはサマータイムには対応しない、価格帯が高いといった問題点がある。
それを解決できるのがスマートフォンとの連携だ。「スマートフォンは世界で10億台を超えているのでほとんどの人が持っている。基本はスマホを“電波塔”という形で使い、タイムサーバのネットワークを経由して時刻を取得する。最初にスマートフォンと時計のペアリングという設定はあるが、それ以降は気にしないで受信できる」(増田氏)と説明した。
カシオは、タイムサーバネットワークを利用し、世界中どこにいてもGPS精度の時刻を配信できるシステムを確立。「EDIFICE(エディフィス)」シリーズに加え、秋にも女性向けの電波ソーラー時計「SHEEN(シーン)」にもスマートフォンリンクに対応したモデルを投入する予定だ。
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