ハーマンインターナショナルは、日本における自動車用インフォテイメント、オーディオシステムの開発拠点である名古屋オフィスをプレス向けに公開した。オフィス内にはハイエンドオーディオをそろえた試聴室から、カーオーディオなどを調整するカーラボまでを備える。
カーオーディオを長く手掛けるハーマンが提案する未来のカーオーディオとはどんなものか。また、2015年に新事業部として立ち上げたコネクテッド・サービスが提供する運転支援システム「LIVS」とは何か。自動運転の実現に向け、今まで以上に注目が集まる自動車関連事業に関する最新の取り組みを紹介する。
ハーマンでは、2015年に企業ロゴを変更。それに合わせ、事業名称もコネクテッド・カー、コネクテッド・サービス、プロフェッショナル・ソリューション、ライフスタイル・オーディオへと改めた。
自動車関連を担っているのは、コネクテッド・カーとコネクテッド・サービス事業部。「コネクテッド・カーは、4事業部の中で直近12カ月の収入が日本円にして約3300億円と、ハーマンの中でも最大の売上を占める」とハーマンインターナショナル代表取締役社長である仲井一雄氏は現状を説明した。
JBLやハーマン・カードン、インフィニティなどのオーディオブランドを数多く持つハーマンが、自動車関連事業を手がけたのは1975年。現在、取り扱いブランドを「Competitive」「Leading」「Luxury」「Prestige」と4つのマーケットに分類し、提供している。「ブランドの多さもあるが、エントリーからハイエンドまでをほぼ網羅し、カーオーディオブランドとしてはナンバーワンの状況」(仲井氏)だと言う。
JBLは、トヨタ自動車とプジョー、ハーマン・カードンはBMW、メルセデス・ベンツ、ボルボ、スバル、ジープ、MINIと、提供するオーディオブランドごとにカーメーカーを限定する戦略を敷く。なかでも特徴的なのはマークレビンソンで、2000年の導入以来、提供しているのはレクサスのみ。これは「マークレビンソンを再生し得る静寂な環境を車内で構築できたのはレクサスのみだったから」であり、今でも「オンリーレクサス」の状況が続いているという。
では、実際にカーオーディオはどうやって音作りをしていくのか。その秘密は社内の視聴室にあった。視聴室には、JBLのフロア型スピーカ「Project EVEREST DD66000」(価格:310万円/1本)のほか、マークレビンソンのモノラルパワーアンプ「No53」(同:400万円)などのハイエンドオーディオシステムが構築されている。エンジニアは、音質調整前にこの視聴室にこもり、オーディオの音を叩き込む。
大切なのは、ホームオーディオが再現するステレオ感をカーオーディオでどこまで再現できるか。また"ビビらせない音作り”はどうやって実現するかなど。車内では革シートと布シートでも音響に差が出るため、それぞれでチューニングを変更するといったきめ細やかな対応も求められる。
なお、ハーマンではホームオーディオ、カーオーディオの音を聞き分ける「トレンドリスナー」制を採用する。これは聴覚試験をパスしたスタッフにのみ与えられるもので、他社のオーディオ製品などを比較試聴し、ベンチマークする役割を果たす。現在米国を中心に100人ほどが存在するという。
ハイエンドオーディオ仕込み高音質を追求する一方、新しいカーオーディオの取り組みについても積極的だ。現在「SUMMIT(サミット)」と呼ばれる音響システムに取り組んでおり、いくつかの新機能は試聴デモができる段階だ。
その1つは「ISZ(Individual Sound Zones)」と呼ばれるシステムで、選択したシートにのみ、特定の音を届けられるというもの。例えば運転席にはカーナビゲーションの音声、リアシートには再生されている映画の音などが可能。ヘッドレスト部にスピーカを搭載し、そこから他のスピーカの音をキャンセルする音を出すことで、実現するとのこと。さまざまな用途が考えられるシステムだ。
同様に特定のシートのみ、音楽の低音域を増強できるのが「PERSONAL BASS IMPACT」だ。これはシートに搭載された加振器によって、低域が増したように感じる仕組みで、音自体に変化はないとしている。
このほか、同乗者のスマートフォンをBluetoothでつなぎ、どの端末からも楽曲をプレイリストに追加できる「CONNECTED JUKEBOX」、世界各国にあるコンサートホールの音を再現する「VIRTUAL VENUES」、音楽情報を抽出して再構成することでより空間を広げた音として聴くことができる「QUANTUM LOGIC IMMERSION」なども、実用化に向け準備を進めている。
次回は、運転支援システム「LIVS」を中心とした、コネクテッドカーの取り組みについて紹介する。
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