VRシステム「HTC Vive」レビュー(後編)--ルームスケールVRと「Chaperone」を体験

Scott Stein (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2016年04月22日 07時30分

(編集部注:米CNETによる「HTC Vive」のレビューを2回に分けて翻訳して公開します。前編は4月20日に公開されています)

ルームスケールVRと現実の檻

 「HTC Vive」は、立ち止まった状態や座った状態でも使おうと思えば使うことができ、この点は「Oculus Rift」と同じだが、移動範囲を広げて部屋全体にわたる仮想現実(VR)を実現することもできる。そもそもこの「ルームスケール」VRこそが、HTC Viveを欲しいと思う理由だろう。しかし、それには少なくとも2m×1.5mの移動スペースが必要になる。ライトボックス間の対角線距離の上限は4.9mまでだ。ボックス同士を結ぶ線上には、遮るものがあってはならない。できれば、ボックスは高い位置に設置するのが望ましい。筆者は結局、カメラの三脚を使うか、本棚や積み重ねた箱の上にバランスを取って慎重に設置することになった。

光を発する青色の線のグリッドがVR内でどのように見えるかを描いた図
光を発する青色の線のグリッドがVR内でどのように見えるかを描いた図
提供:Sarah Tew/CNET

 これらすべてを設置する作業は、専門家の仕事のように思える。特別なこだわりを持つ人向けの機器のように感じることもあった。「Xbox」の「Kinect」に怖じ気づくような人にはまったく向いてない。少なくとも、HTC Viveには分かりやすい説明書が用意されている。筆者はソフトウェアをダウンロードして、ボックスにケーブルを接続し、部屋の広さを計測して、ヘッドセットを装着する作業を30分で完了した。

 これをわざわざ説明するのには理由がある。簡単に使えるものが欲しいのならHTC Viveに手を出すべきではない、ということを知ってもらいたいからだ。これは熱狂的愛好家向けのVRであり、シンプルさを犠牲にして最先端の質を実現している。

 部屋のスキャンが完了してヘッドセットを装着すると、筆者はHTC Valveが作成したチュートリアルの中にいた。このチュートリアルが、筆者の新しいスペースの境界線を案内してくれる。周りには白い床が広がっていて、壊れたテレビが部屋の隅で音を立てている。下を向くと、自分の前にViveのコントローラが浮かんでいた。

これらのライトボックスを空間内で設定するには三脚が必要になるかもしれない。
これらのライトボックスを空間内で設定するには三脚が必要になるかもしれない。
提供:Sarah Tew/CNET

 ロボットの目が周りを浮遊し、コントローラのボタンを押すように告げる。筆者は動物の風船を破裂させ、レーザーを発射した。自分の世界の端に向かって歩いていき、壁まで到達すると、光を発する青色の線のグリッドが表示される。これにより、自分の(現実)世界の端まで来たことがわかる。

 現実世界での一歩は、仮想世界でも一歩になる。Valveの無料ミニゲーム集「The Lab」で、筆者は山の頂上からロボットの犬に向かって棒を投げている。岩棚に向かって歩を進めたが、そこにたどり着く前に、光る青色の線が現れた。現実世界の檻だ。もっと先に進みたかったが、もし進んでいたら、目には見えないが確かに存在するクローゼットのドアにぶつかっていただろう。ほとんどのゲームには、コントローラで狙いを付けて空間内を素早く動くことで「テレポート」移動する手段があるが、それは実際に歩を進めるのと同じではない。

 仮想の部屋は大きければ大きいほどいい。ルームスケールVRの最小限のスペース要件(筆者のホームオフィスはぎりぎり合格)を満たしていれば、なんとか利用可能だが窮屈な感じがする。現実世界ではかなり広く見えるかもしれないが、VRでは、自由を制限するサメ用の小さな檻のように感じる。もっと広い場所で利用すれば(筆者は勤務先の広大なスペースを使った)、壁の存在を忘れられるだろう。気がつくと、筆者は海底を歩きながら、懐中電灯を魚に向けていた。恐いと思った。「Realities.io」アプリで、現実世界の教会を素晴らしいグラフィックスで再現した作品の中を歩いていると、かび臭い空気を吸っているような感覚に陥った。距離感が広大になった。

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