グリーは4月13日、5月10日に開催するVRカンファレンス「Japan VR Summit」(JVRS)の説明会を開催。その中で、VRについての考え方や、米国などと比べて日本でVR(バーチャルリアリティ)市場が盛り上がらない理由が語られた。
同日の説明会で登壇したVRコンソーシアム代表理事の藤井直敬氏は、「VRの本来の意味は仮想現実ではない。見た目は異なっていても、実質的には同じものという意味」と説明。その上で、VRは人類の認知を拡張し進化させる環境技術であると語る。
VRと聞くと、ヘッドマウントディスプレイを装着して、異世界を体験できるようなものを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、現実空間をCGなどで完全再現することは難しく、VRを体験する人も「現実世界とは違うもの」と自覚している。そうしたVRの現状に「不満があった」と藤井氏は話す。
そこで同氏が2012年にソニーと開発したのが、過去と現実の区別をつかなくさせる「代替現実」によって、現実とバーチャルのギャップを埋めるヘッドマウントディスプレイ「PROTOTYPE-SR」だ。実際に2012年に開催された東京ゲームショウで「没入快感研究所」として展示された。
体験者は、PROTOTYPE-SRとヘッドホンを装着し、ライブ映像(一人称ライブカメラから出力されるリアルタイム映像)と、あらかじめ用意された過去映像を、絶妙なタイミングで切り替えながら視聴することで、現実と映像世界の区別がつかなくなってしまう。それほど人の脳は「いい加減なもの」(藤井氏)だという。
藤井氏のアプローチは、バーチャルを現実に近づけていくのではなく、現実を映像のクオリティまで下げることで、この差異をなくそうというものだ。つまり、人間の”錯覚”を利用したVRと言える。「たとえ(話し相手が)タブレットなど人じゃなかったとしても、本人がいるとしか思えないコミュニケーションができれば現実に感じてしまう」(藤井氏)。
日本でもコロプラやグリーなどがVR専門の投資ファンドを組成するなど、一部の企業はVR領域に積極的に投資しているが、米国など海外と比べると、市場が盛り上がっているとは言い難い。なぜ、日本ではVRがいまひとつなのだろうか。
この疑問に対し、グリー取締役 執行役員の荒木英士氏は、今回のVRブームはヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift」が発端となっており、主にPCやコンソールゲームが対象デバイスになっていると説明する。
しかし、日本ではコンソールゲームではなくスマートフォンを始めとするモバイルゲームが発展したため、米国ほど市場が拡大していないとの見解を示した。ただし、今後はモバイルVRの波が訪れると予想しており、そのタイミングでいかにキャッチアップできるかが重要だとした。
では、誰もが当たり前のようにVRを利用する普及期はいつ頃になるのか。この質問に対し、VRコンソーシアムの藤井氏は「時期はわからないが、従来のように一過性のブームではなく確実に浸透していく」とコメント。グリーの荒木氏は、対応端末の普及などを考えると「2018年ごろになるのではないか」と語った。
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