これまで何年も「動画元年」と言われてきた中で、なぜAbemaTVの開局時期に2016年4月を選んだのか。藤田氏は「これまでもずっとタイミングを見計らって大ケガしない程度にやってきたけれど、大きな勝負に出た」と語り、大きくの3つの要因を挙げた。
こうした環境の変化を鑑みて、「本格参入の時だ」と決意したと明かした。
AbemaTVは普段テレビを視聴しているマス層を狙っていることから、従来のスマートフォン向け動画サービスとは、機能やサービスの内容が大きく異なっている。
まず、地上波と同様に、番組と番組の間にCMを挟む広告モデルにすることで、すべてのチャンネルを無料で視聴できるようにした。また会員登録を不要にし、ウェブサイトにアクセスしたりアプリを立ち上げるだけで見られるようにすることで、ユーザーの初期利用時のハードルを大幅に下げた。
NetflixやHuluのような、自分で視聴したい番組を好きな時間に見るオンデマンド型のサービスも検討したが、最終的にはテレビと同様に決まった時間に番組が放送される形を選んだ。暇なときに惰性で見てもらうことを目的としているため、アプリを起動した時に最初に表示される1チャンネル目はあえて生放送の「ニュース」にしたそうだ。「ネットユーザーの頭には“オンデマンド”があるので、そうではない視聴習慣に慣れてもらいたい」(藤田氏)。
これには、同社が運営する音楽聴き放題サービス「AWA(アワ)」の経験が生かされているという。「インターネットといっても、自分で好きな音楽や動画を探して0秒から再生するのは面倒くさい。やはり受け身の方が楽だし、新たなコンテンツに出会えて面白いことに気づいた。また、我々はネット広告の会社でもあるが、人が能動的に好きなものを見たり探したりしている時の広告は効果が薄く、受け身の時の方が効果が圧倒的に高い」(藤田氏)。
また、1年のうち4分の3の時間や労力を割いたのが、サービスの“クオリティ”だという。ネットサービスはサクサクとした操作感や、サーバのレスポンスが早いものが選ばれているという考えのもと、同社の技術力やデザイン力を駆使したと藤田氏は説明する。筆者も同日にAbemaTVのアプリで視聴してみたが、スワイプ操作での番組切り替えがとても気持ちよく、コメントの表示もスムーズだった。また、Wi-Fi環境ではあるが、数時間流しっぱなしにしても一度も動画が止まるといった不具合はなかった。
AbemaTVでは、Twitterなどと同じく、誰もが“当たり前”のように利用するサービスを目指すという。そのために、藤田氏は「1日に1000万人が見るメディア」となることを目標に掲げた。
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