日本電気(NEC)と産業技術総合研究所(産総研)は、「産総研-NEC 人工知能連携研究所」を6月1日に設立すると発表した。企業名が冠に付いた研究所は、産総研としては初となる。
今回の研究所設立は、NECの持つ高度な人工知能技術と産総研のシミュレーション技術の融合を目的としている。膨大なデータから解を導く人工知能にシミュレーション技術を組み合わせることで、通常のシミュレーションでは発見できない特異な事象の検出を目指す。また、過去のデータが十分にそろっていない未知の状況下において、行政やユーザー企業などの意思決定の支援も目指す。
研究所では、3年をめどに3つのプロジェクトを推進する。1つ目は、シミュレーションと機械学習の融合を図るもの。“スーパー台風がどのような条件で発生するか”といった不測の希少災害の発見・想定や、“安定的に飛行する低燃費の飛行機”の開発など、未知の製品の最適化条件を探し出すことを目的としている。一般的なシミュレーターでは探せない、機械学習との組み合わせだからこそ実現できることという。
2つ目のプロジェクトでは、シミュレーションと自動推論技術の融合を目指す。こちらは、未知の事象に対応するもので、知識データベースに加え、事象の対処に必要な知識をシミュレーションから補うことで、妥当な推論結果を導き出す。また、技術的なチャレンジとして、推論結果について人間が納得できる説明の自動生成を目指す。プラントなどインフラ設備での異常検知や原因分析、事故予測での応用を想定している。
3つ目は、自動運転車やAIロボットによる工場のオートメーションが進んだ社会において、AI間の協調動作を目指す。車であれば、定刻で運行する必要のある公共交通、迅速に目的地に到着する必要のある救急車両、早く目的地に到着したい自家用車の挙動をマネジメント。平均的に早くそれぞれの目的達成を目指す。AI間の協調動作を実現するには、異なるプロダクトでも動作するよう標準化が不可欠となる。このプロジェクトでは、標準化に向けた基礎研究を確立する狙いもある。
人工知能連携研究所は、産総研の人工知能研究センター内に設置される。同センターは国内外の大学、企業、公的機関と連携し、AI研究の実用化と基礎研究を進めるためのプラットフォーム形成を目的としたもの。2015年5月に設立された。AIに関するシミュレーション、センシング、データマイニングなどの基礎、応用研究活動、データ・プログラム・計算資源などのリソースを管理・提供する。
一部の分野では海外が先行しているように見える人工知能研究だが、研究を統括する大阪大学産業科学研究所教授の鷲尾隆氏によると「シミュレーションと人工知能という分野の横断や、一般的な産業への応用などは海外でもあまり例がない」という。別々の分野として研究されている両者を融合し、実社会での大規模な実装をにらんだ研究は画期的であり、非常に先進的な取り組みだとした。
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