Adobeは、年次で展開しているデジタルマーケティングカンファレンス「Adobe Summit 2016」を米国時間3月22日から24日まで開催しており、「エクスペリエンスビジネス」の重要性を説いている。そして、このSummitの中で3月22日に、個人単位のマーケティングを可能にするクロスデバイスの消費者認識ネットワーク「Adobe Marketing Cloud Device Co-op」を発表した。年内には正式にサービスを開始する予定で、現在プライベートベータプログラムに参加する企業を募集している。
Adobeのデジタルマーケティング担当エグゼクティブ バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャであるBrad Rencher(ブラッド・レンチャー)氏は、「実はわれわれは、人に対してマーケティングをしてきたわけではなく、デバイスを相手にマーケティングをしてきた。製品を購入するなど実際にアクションをするのは人なのに」と言う。それは、昨今のデジタルマーケティングの取り組みは、IPアドレスとブラウザのCookieに重点を置いており、さらに職場ではデスクトップPC、電車ではスマートフォン、自宅ではタブレットというように、消費者はデバイスを次々に替えて利用するため、特定の消費者を認識、分析し、関係を構築することは非常に難しかったというわけだ。
Adobeによると、79%(10人におよそ8人)の消費者、ミレニアル世代においては90%が、行動中に複数のデバイスを切り替えながら利用しており、またデバイスを保有する消費者の66%が、デバイス間でコンテンツが同期できていないことに不満を感じているとという。
デバイスを切り替えようとも、こうした個人を識別してマーケティングを実現するのがCo-opだ。仕組みとしては、世界の大手企業の協業による会員制で、Co-op会員企業は、消費者の個人情報を完全に隠すためにAdobeに暗号化およびハッシュ化されたウェブサイトやアプリなどへのログインIDとHTTPヘッダーデータへアクセスさせる。Adobeはこのデータを処理して、非特定の個人または家族が使用するデバイスのグループ(デバイスクラスタ)を作成する。そして、AdobeがMarketing Cloudを通じてそれらのデバイスのグループを明示し、Co-op会員企業はそれらのデバイスを利用している個人を対象に、測定やセグメント化、ターゲティング、広告配信などが可能になる。最大12億台のデバイスと連携する見込みだという。
「Adobe Marketing Cloudには年間41兆のトランザクションが流れてくる。しかし、もちろん企業の許可がなければデータを利用することはない」(Rencher)。Co-opは、氏名や電子メール、電話番号、サイトの訪問データなどの個人情報は会員企業同士で共有されないため、クロスデバイス技術に伴うプライバシーの懸念はないことを強調している。
また、Co-opは消費者にもメリットをもたらすとしている。たとえば、Aという消費者が旅行サイトからサンフランシスコへ休暇を予約しようとしている。Aはタブレットにあるこの旅行サイトのアプリで、5月1日到着のスケジュールでホテルを検索した後、今度はPCを使ってこの旅行サイトで払戻不可のホテルを予約。こうした際に、現在ほとんどの企業はAがすでに予約済みだと認識できず、ホテルの広告を表示させ続けるので、Aはこれを無視するか不快に感じるだろう。Co-opを利用すれば、Aに対してホテル予約の広告を表示させず、代わりにホテルのスパや客室のアップグレード、食事の割引といった付加価値を提供でき、パーソナライズされ一貫した体験を提供できる可能性があるわけだ。
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