2月4日に30周年を迎えたニフティ。1980年代のパソコン通信に始まり、90年代のインターネット接続サービス、2000年代のウェブサービスの充実、2010年代のモバイルサービス、クラウドサービスと、30年間インターネット一筋で事業を展開してきた同社が今、力を入れているのがIoTだ。
イベント「CNET Japan Live 2016 Target 2020」で、ニフティのモバイル・IoTビジネス部長の佐々木浩一氏が登壇。2015年7月に開始された同社サービス「ニフティ IoT デザインセンター」に寄せられた、各企業のIoTへの取り組み状況や相談事例と、それらを通して得た知見について語った。
IoT化の流れを受けて、2015年7月に開始したのが「ニフティ IoT デザインセンター」だ。専属チームを設け、デバイスのIoT化を目指す企業を、同社が長年培ったネット側の知見やアセットを活用して支援するサービスを提供している。
佐々木によると、IoT化の手順には4つのフェーズがあるという。まずは「アイデアデザイン」。製品をネットにつなぐ前に、IoT化する目的や価値、アイデアをきちんと考えるプロセスだ。2つ目はそのアイデアがビジネス化できるのか、実証実験はできてもマネタイズが可能かを検討する「ビジネスデザイン」。3つ目はネットにつなげるのに必要な要素やシステム化の可否を追求する「システムデザイン」。さらに、量産化の前にプロトタイプで検証する「プロトタイプ」を経て、実用化することが必要だと話す。
一方、こうしたプロセスの中で、メーカーや製造業者は、インターネットにつなぐ部分のノウハウに乏しいという。そこで、ネットワークやクラウド、会員基盤等の資産を最大限に活用し、ソリューションの提案を行うのがIoT デザインセンターの役割だ。「相談料は無料で、まずはアイデア出しからでもカジュアルに相談してほしい」と佐々木氏。
同センターのサービス開始以来、現在(2月)までに受けた案件は70件あまり。分野はファクトリーオートメーション、ホームオートメーション、ヘルスケア、交通・流通、マルチメディア、エデュケーションと多岐にわたり、6割強がデバイス関連を含み、7~8割がデータを扱った案件という。スマホアプリで家電をコントロールできる、ソニーコンピュータサイエンス研究所の「Kadecot」や、川﨑フロンターレが2015年秋にJ1リーグ公式戦で実施した、スマートフォンを利用した来場者参加型サービスの実証実験なども同センターで担当した案件だ。
佐々木氏が明かしたところによると、IoT デザインセンターで相談やヒアリングを受けた案件のうち、見積もりやプロトタイプまで進んだものは3割、最終的に実施に至ったものはさらにその3割程度。しかし、「相談・ヒアリングから見積もり・プロトタイプまでのプロセスで得られた知見こそが大切。クラウドやサービス等に活かせる」と強調する。
一方、現時点での企業によるIoT活用分野への投資は「モニタリング」が中心と分析する。具体的には、(1)商品やサービスの製造・保管・配給過程といった「供給プロセス」、(2)店舗や事務所における「顧客体験」、(3)販売・リース後の「商品やサービス」、(4)センサ・アプリ・ウェアラブルなどを活用した「消費者動向」──の4つに分類できるという。
こうした状況から、現時点での企業のIoT化で効果が出やすいポイントとして、佐々木氏が導き出した結論は「モニタリングが収益の近道」。まずは現場のオペレーションの改善から着手するのが得策で、生活者向けのサービスや遠隔操作や自律化にまで波及するのは当面先だと推測する。
また、70件あまりのIoT案件を通して、見えてきた課題を次のように語る。
「まずは何のためにネットにつなぐのか。顧客に提供する本来の価値は何かというのが見出しにくく、投資対効果を明確にできないため、各社模索中の状態にある。しかし、モニタリングなど確固たる価値があるものは進んでいる。言い換えれば他社に先行できるチャンスが非常にあるとも言える」
さらに、課題を解決するのに必要な要素として「作り出したい価値や目的を明確にすることが重要。技術や知見はメーカー側だけでもネット側だけでも不十分。技術に加えてビジネスも分かる人が強いことを実感している」と、70件あまりのIoT案件に関わり見えてきた、これからのIoTビジネスの取り組み方のポイントを総括した。
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