ビザ・ワールドワイド(Visa)は2月10日、Visaの日本市場戦略と今後の展望について説明した。2015年9月に日本の代表取締役に就任したジェームス・ディクソン氏は、先進国の中で日本はクレジットカード使用率が圧倒的に低いと語り、東京オリンピックが開催される2020年やその後に向けて、政府や企業とともに「キャッシュレス・ジャパン」を目指す姿勢を見せた。
政府観光局によれば、2015年の訪日外国人旅行者数は前年比47%増1973万人、経済効果は3.4兆円となっており、2016年は2000万人の大台を超えることは間違いなさそうだ。しかし、“現金社会”の日本では個人消費支出におけるカード支払いの比率が17%に留まっており、米国(41%)や中国(55%)、カナダ(68%)、韓国(73%)などと比べると圧倒的に低いという。
ディクソン氏はその要因として、日本は海外諸国に比べて治安がよく、現金を持ち歩いていても安全であること。またATMが多いため、どこでも現金を引き出すことができ、自動振替や振り込みなどの仕組みも整っていることから、電子決済に必要性を感じない人が多いのではないかと話す。その結果、クレジットカード決済を導入する店舗が他国よりも少なく、訪日外国人による消費機会を逃してしまっていると指摘する。
同社が実施した訪日外国人による東京の評価に関する調査でも、「交通」や「食事」の項目では他の先進国と同等か上を行く評価だったが、「支払い」のみが低評価となっている。インバウンド消費に占めるカードの割合も、日本以外のG8の平均は59%だったが、日本は38%。また、37%が「カード払いができれば消費額は増える」と答えていた。
こうした状況がある中で、Visaではさまざまなアプローチで、カード普及に向けた取り組みを進めてきた。まず、クレジットカード以外にも、即座に口座から引き落とされるデビットカードや、先払いのプリペイドカードなどを提供し、消費者の心理的なハードルを下げている。同社によれば、実はクレジットカードよりもデビットカードの発行枚数の方が多くなっており、日本でもVisaデビットの発行を促していきたいとしている。
また、中国の旧正月のタイミングに「さっぽろ雪まつり」とキャンペーンを実施したり、京都市と「地方活性化包括連携協定」を結んだりするなど、地方創生を支える施策なども展開しているという。
電子決済を利用しない人の多くが懸念しているのがセキュリティだ。そこで、Visaでは高度なセキュリティを実現するため、カードのEMV対応を進めている。また、トークン決済によって、なりすましや偽造カードによる不正取引を検知できると、安全性をアピールした。
さらに、世界200カ国以上の加盟店やクレジットカード発行会社をネットワーク化した「VisaNet(ビザネット)」のオープン化を進めていると説明。セキュアな環境で、同社のAPIやSDKを提供することで、多種多様なサービスの創出を目指したいとした。
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