日本マイクロソフトなどが参加する業界団体「Windowsクラスルーム協議会」は11月28日、教育ITに関するイベント「Education Day」を都内で開催。プログラミング教育についてのセッションでは、(1)日本マイクロソフトがデンマークLEGOと共同開発した「レゴ マインドストーム」を活用したプログラミング教育カリキュラム、(2)Microsoftが買収した「Minecraft」を使用したプログラミング教育--についての講演が行われた。
同イベントで日本マイクロソフトは、「理数系人材を育成するための教育IT推進」を前面に押し出している。基調講演(関連記事)では、MicrosoftバイスプレジデントのAnthony Salcito氏が小学生から大学生まで幅広い年齢でのSTEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)教育が重要だと語った。同社が提供するプログラミング教育コンテンツについても、「エンジニアを育成するための教育ツール」という位置付けで紹介された。
日本マイクロソフトとLEGOが国内向けに独自開発した小中高生向けプログラミング教育カリキュラム「ロボット×クラウドではじめての本格プログラミング ~レゴ マインドストームで地球を探査」は、Visual Studioを使ってC#言語でコードを書き、LEGOが提供するセンサロボット「教育版レゴ マインドストームEV3」を操作するものだ。センサで収集したデータはMicrosoft Azure上のSQL Databaseに保存し、Excelをフロントにしてデータを可視化するシナリオになっている。
テキストベースのプログラミングや、IoTデータ分析の基本を学ぶことができる同カリキュラムは、開発に関わったアフレル 渡辺登氏によれば、「21世紀型スキルの育成というよりも、子供たちにプログラマーやエンジニアになってほしいという思いで作った教育コンテンツ」である。
早稲田大学高等学院 教諭の吉田賢史氏は、同カリキュラムを課外授業で実践した経験から、中等教育にプログラマー育成のための教育カリキュラムを取り入れる際の留意点を指摘した。吉田氏は、中等教育における高度なプログラミング教育は、プログラマーになる生徒を増やすことだけでなく、生徒が自らの思考特性に気付き、自分が強みを発揮できる役割を自覚することに役立つと考える。
「授業に参加する生徒全員をプログラマーにすることが目的ではない。プログラミング教育が論理思考を育てるのではなく、論理思考力が高い生徒がプログラミング教育を受けるとその能力が伸びる。レゴプログラミングの課題に対して、自分はコードを書くことが得意なのか、要件定義が得意なのか、仕様書を作成するのが得なのかなど、自らの役割を考えてチームで協働することに意味がある」(吉田氏)
続いて、子供向けのプログラミングスクールを運営するTENTO 代表 竹林暁氏が、「Minecraft」を使用したプログラミング教育について講演した。
Minecraftは、ゲーム内の“仮想世界”にブロックを配置して自由な形の建造物を作っていくモノづくりゲームだ。2014年に、Microsoftが開発元のスウェーデンMojang ABを買収した。教育用に機能拡張したMicrosoft Eduエディションでは、複数人の生徒が同時にログインし、グループで協同して1つの建造物や街をつくる活動ができるほか、生徒のアクションを制御する権限をもった先生用のアカウントが用意されている。
Minecraftでは、プログラミングでブロックを積み上げたり、ゲームそのものの機能を拡張することが可能で、(1)ゲーム内でビジュアルプログラミング(Lua言語)する方法、(2)ゲーム外でエディタを使ってプログラミング(Python)する方法、(3)Javaで「MOD」と呼ばれる拡張ファイルを作成する方法--の3パターンのプログラミング教育ができる。
竹林氏は、「子供のプログラミング教育は、Scratchのようなビジュアルプログラミングから始まるが、そこからどうやってテキストベースのプログラミングに移行するかが課題だった。Minecraftはその橋渡しを担うもの。子供の興味が、自然とビジュアル言語からテキスト言語に移行する」と説明した。
「マイクラ」の通称で小学生を中心に人気のあるMinecraftは、プログラミング教育ツールというよりはゲームのイメージが強く、小学校の授業での利用には保護者からの反発も予想される。そのような中でも、徐々に教育に取り入れようとする動きが強まっており、公立の小学校でも授業に活用する事例が出てきた。
徳島県の東みよし町立足代小学校は、正規の授業にMinecraftを取り入れている。同校 教諭の土井国春氏によれば、小学4年生の図工の「身近にあるモノで建物を作る」という課題で、実際に空き箱などを使って工作した作品を、Minecraft上に再現することをやってみたという。
「Minecraftは児童の“引き込まれ度合”が強い。児童が自分で作業を止められないほど楽しいので、毎回の授業ではグループ内に学習リーダーを1人決めて、メンバーの作業を管理する役割を担ってもらっている」(土井氏)。Minecraftは子どもにとって楽しいものであるため、児童が自分の作業に集中しすぎてしまうことが課題だ。土井氏は、Minecraftでの作業中には、教師と児童が細目に対話する仕組みが必要だと感じており、ここで学級内SNS「Yammer」の活用を検討していると話す。
同校では現在、学習の振り返りにYammerを活用している。「授業の終わりの3分間に、教師が“この授業の感想は?”と投稿したものに対して、クラスの全児童に自分の感想を書き込んでもらっている。友達の意見を読んで自分の考えを深めたり、自分と異なる考えに触れて考えたりする機会になっている」と土井氏。同校の児童はすでにYammerでのコミュニケーションに慣れていることもあり、今後はMinecraftとYammerを組み合わせた授業を設計していく予定だとする。
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