VOD元年は実現したか?--ゲオ、GYAO、フジテレビが語る現状と未来 - (page 2)

黒船「Netflix」参入はVOD業界に吉と出たか


フジテレビジョンコンテンツ事業局長の山口真氏

 パネルディスカッションでは、モデレータの西田氏が「まずNetflixについてどう捉えているか」と質問した。すでにコンテンツを共同製作しているフジテレビの山口氏「先ほども話したが、長期的なパートナーシップではなく、条件が整えば一緒に作品を作っていきたい。距離感はそのほかのプラットフォームの方と同様。今回共同で製作してみて感じたのは予想以上にコンテンツに対する愛や熱意が強いということ」と話す。

 同じく映像配信サービス事業者としての立場から意見を求められると、GYAOの宮本氏は「インターネットで映像を配信するという、まだ一部の人しか認知がなかったものが、2015年に入ってプレーヤーが増えることで一般的になりつつある。この市場に参加者が増えるのは良いこと」とした。


ゲオホールディングス代表取締役社長の遠藤結蔵氏

 2016年にサービスを開始するゲオチャンネルは、NetflixともGYAOとも異なるサービス形態。新規参入する立場から遠藤氏は「店頭での接点も持っているのは私たちの財産。面白いハイブリッド型VODを提案することが商機になると思っている」とコメント。さらに「レンタルのリアルショップは現在過渡期かもしれないが、予想以上に長く続くビジネスになると思っている」と分析した。

 Netflix参入と同様に、2015年の大きな動きは見逃し配信の環境整備だ。「テレビ局から見た見逃し配信とはどんな位置づけか」と西田氏が問うと、山口氏は「ここ1年の動きはその前5年よりも大きい。大きなきっかけとなったのはやはり民放公式テレビポータル『TVer』の登場。1つの風穴が開いたというイメージ」とテレビ局としての見解を述べた。

またたく間に人気コンテンツとなった見逃し配信


GYAO代表取締役社長の宮本直人氏

 TVer同様に、見逃し配信コンテンツもそろえるGYAOは「ドラマ、バラエティともに見逃し配信はまんべんなく利用してもらっている。見逃し配信の視聴者の中には、次回の放送をテレビで見るという人が一定数存在する。テレビ回帰という観点からいっても見逃し配信をする意味がある」と現状を説明した。

 このような意見を受け、西田氏は「見逃し配信を見た人を含め、次のコンテンツをどう見てもらうかは非常に重要。視聴データの行動履歴をどう活用しているか」と質問。宮下氏は「GYAO!では、『これから○○を配信します』などのプッシュ通知をしているのが1つ、加えてレコメンド機能はログがたまればたまるほど性能が上がってくる。Yahoo! JAPAN IDとひも付けることでデータを蓄積できるようにしている」と説明。

 加えて「プッシュ通知もレコメンドによるデータ活用も重要だが、ソーシャルメディアの口コミをどう上げるかも非常に大切。ソーシャルは3つめの需要なファクターを担っている」(宮本氏)とした。

 新たなレコメンドデータとして期待されるのがネット上のデータに加え、リアル店舗によるデータを掛けあわせるゲオチャンネルだ。遠藤氏は「履歴を見ていくと、人気の線にも太い細いがあり、その中で思いもよらない線の太さが出てくることがある。そこまで太い線となって表れる人気作には必ず理由がある。そうした作品を配信や店舗の壁を飛び越えて訴求していきたい。また店頭では、借りた作品を返却した時に面白そうな作品を見つけたり、探している作品の隣にも見たい作品が並べられていたりと、発見が多い。そうした店舗での発見をネット上でも連携して見せていけると思う」と意欲を見せた。

 最後に映像配信が映像業界に与える影響について問うと、山口氏は「長い目で見れば、映像配信がテレビ局を救ったと言われる可能性があると思っている。作り手は1人でも多くの人に見てほしいという気持ちで作っていて、配信に作品は提供しないなど、制限をかけることは苦痛なはず。この部分をきちんとビジネスにすることで、作り手の思いに応えていきたい。いいコンテンツに対してきちんと対価を払える、好循環にできるツールが映像配信だと思っている」とコメント。

 続いて宮本氏は「これから映像配信が大きくなるポイントは場所、時間、デバイスの3つ。この3つを掛け合わせることで、コンテンツに触れる時間が増えていくはず」とした。


モデレータを務めたジャーナリストの西田宗千佳氏

 最後にゲオの遠藤氏は「作り手が作ったコンテンツをきちんと届ける。ここに私たちの立ち位置がある。現時点では映像配信とはなにか、わからない人もたくさんいる。そこを店舗があるメリットをいかし、一番ハードルの低いタッチポイントして役に立ちたい」と話した。

 西田氏は「映像配信に対する状況はここへきて大きく変わった。配信、テレビ、パッケージメディアなど、放送に向いたコンテンツもあれば、配信に向いたコンテンツもある。しかし放送でしか出さない、パッケージでしか見られないとなると、ユーザーが引いてしまうことにもつながるコンテンツは宝物にせず、視聴者に見せることが必要」とまとめた。

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