グーグルは米国時間11月5日、Android向けの「YouTube」アプリにおいて、VR(仮想現実)動画の視聴が可能になったことを発表した。同社の段ボール製VRヘッドセット「Cardboard」と併用することで、360度動画を3Dで視聴できるようになる。
Cardboardは、スマートフォン(Android/iOS)を装着して使用するVRヘッドセット。設計図をオープンソース化しているため、誰でも印刷して組み立てられるほか、多くのサードパーティ企業が1000円前後で完成品を販売しているため、手に入れやすい。開発者向けにSDKが公開されており、Google Playには現在1000以上のVRアプリが登録されているという。
ユーザーは、Android搭載スマートフォンのYouTubeアプリを起動し、視聴したい動画を選択。サブメニューからCardboardアイコンを選ぶと動画が左右に2分割され、3Dで視聴できる。すでにCardboardでは360度動画を視聴できたが、新たに奥行きを感じられるようになり、より没入感が増している。さらに、VRではない一般的なYouTube動画も、シアターモードという形でCardboardで視聴できるようになった。
360度の3D動画の撮影には、同期した16台の「GoPro HERO4」カメラを円形につないだ専用カメラ「Odyssey」が必要になる。そこで撮影した映像を、VR動画の作成システム「Jump」のアセンブラによってVR動画に変換し、YouTubeに公開する。
Jump担当プロダクトマネージャーのフセイン・ベンガリ氏によれば、現在は一部の撮影スタジオ「YouTube Space」で3D映像を撮影できるという。今後は、フォロワーが多い動画クリエイターに貸し出すことも検討しており、より多くの消費者が簡単に3D動画を撮影して公開できる環境を整えていきたいと語る。
昨今は、「Oculus Rift」や「Gear VR」など、各社からさまざまなVRヘッドセットが提供されているが、それらの多くは高額であり、専用のリッチコンテンツも必要になる。そのため、普及には時間がかかることが予想される。
グーグルが選んだのは逆のアプローチだ。低価格なヘッドセットであるCardboard、今では多くの消費者が持っているスマートフォン、そして10億人が利用する動画プラットフォームYouTubeを組み合わせることで、VRをより身近な存在にしていきたいとベンガリ氏は話す。
ところでVRと聞くと、どうしてもゲームなどのエンターテインメントコンテンツが真っ先に浮かぶが、ほかにはどのような活用ができると考えているのだろうか。ベンガリ氏は、VRについて「自分とは違う立場の人がどんな視点で世界や景色を見ているのか分かるようになる“共感のマシン”だ」と表現する。
グーグルではすでに、教室にいながら社会科見学ができる教師向けのプログラム「Expeditions」を提供しており、生徒はCardboardによって、ヴェルサイユ宮殿や国立アメリカ歴史博物館など、世界中の施設を体験できる。これまでに100万人以上の生徒がパイオニアプログラムに参加しているそうだ。これを応用して、障がい者が旅行体験をするといったことも可能になるとしている。
同社によれば、Cardboardの出荷台数は、2015年末までに200万台を超える見込みだという。360度の3D動画を視聴できるのはAndroid版のYouTubeアプリのみだが、今後はiPhone向けのアプリにも対応する予定。ただし、時期については未定としている。
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