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Wearable Tech Expo 2015

FOVE小島氏とUIデザイナーJayse氏が語る、仮想空間の発達と未来のUIデザインの可能性

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 ウェアラブルテクノロジのカンファレンス「Wearable Tech Expo in Tokyo 2015」。「UIテクノロジーとフューチャーデバイスの行方」と題したセッションでは、ユーザーインターフェース(UI)デザイナーのJayse Hansen氏と、アイトラッキングHMD「FOVE」CEOの小島由香氏らが、未来のウェアラブルやIoTデバイスに必要なUIデザインについて議論した。


仮想空間の発展は、新たなデザインの可能性が広がる

  • UIデザイナーのJayse Hansen氏

 Jayse氏は、映画『アベンジャーズ』『アイアンマン』などの映画の演出におけるホログラムやHUDなどのUIを設計。映画だけでなく、VRやARのソフトウェア会社や米国国防総省へのコンサルティング、デザインを行っている人物だ。小島氏は、ソニー・コンピュータエンタテインメントのゲームプロデューサーの経験から、ゲームの双方向性が重要だと考えた。そこから、アイトラッキングと顔認識技術をもとにしたデバイス「FOVE」を開発。KickstarterでのクラウドファンディングやSamsungからの出資を受けている。

 「筋ジストロフィーの子供が、FOVEを使って目の動きでピアノのコードを捉えて演奏したり、目だけでFPS(ファーストパーソン・シューター:一人称視点でのシューティングゲーム)を行い、かつマルチターゲティングも可能になる。現在のアイトラッキング分野は発展途上。コンシューマ向けを開拓していきたい」(小島氏)

 Jayse氏は、映画『アイアンマン』でもアイトラッキングの仕組みを導入。目の動きで複数のターゲットを照準できるようなデザインしたとし、FOVEとの共通点があると話した。小島氏は、マルチロックオンだけでなくズームインの仕組みも今後可能になるという。

 「ズームインは、右目と左目のそれぞれの視線をもとに対象物の距離を認識し、そこからズームインが行えるような仕組みだと話す。すでに米軍も採用し導入を検討している」(小島氏)

 また、VRでは2次元ではなく3次元における奥行きも考えなければいけない。そこで、左右の目の傾きなどをもとに被写界深度を見出すことで奥行きがあるものでもターゲティングできるようになるという。こうした技術的な難しさに対してJayse氏も小島氏も開発の際に意識していることだという。

 「3Dで正確に昇順が合わせられるということはどんなUIでも重要なこと。だからこそX軸、Y軸、そしてZ軸を見出して3次元の空間を捉えるようになることが今後求められる。実際にUIをデザインし始めるとアイトラッキングを通じた空間の捉え方の重要性を実感する。今後はジェスチャーとアイトラッキングを組み合わせたりすることで、照準やアクションの精度を高められるのでは」(Jayse氏)

  • 「FOVE」CEOの小島由香氏

 小島氏も、ハンドジェスチャーやモーションコントローラーとの組み合わせをFOVEで実現したいと語る。

 アイトラッキングを通じてVRの可能性に広がりがでてくる。その先には、さまざまなアプリケーションの開発も待っている。同時に、Jayse氏はアイトラッキングをいまよりもより自然でさりげないものにするためのデザインがあるのでは、と話す。例えば、アイトラッキングではすべての目線を把握しているため、どこを視たのかというデータが残る。こうした視線のデータベースは、人工知能の進化とともにユーザーが次に何をしたいかを予測できるきっかけになるかもしれない、と指摘した。

仮想空間が広がると同時に、現実世界の価値も高まる

 近年では、Intelが画像認識や音声認識、ジェスチャー認識などの機能を搭載したNUI(Natural User Interface)のコンピュータを開発している。Kinectなどさまざまなデバイスも登場し、NUIによる五感を使った新たなUI開発も進んでいる。こうしたトレンドは、すべてをデジタル上で処理し、一切のモノに触れることなく操作しようとする流れでもある。しかし、人間の五感を考えたときには、「触れる」という行為や触れることを人間が求めることもある。それは、デジタルとはまた違ったアナログな発想とも言える。Jayse氏は「仮想空間だけでなく、触れるという人間の根源的な行為にも目を向けなければいけない。だから、すべてをデジタルでするのではなく、デジタルとアナログの両方を考えたUIのあり方を考えていきたい」と話す。

 小島氏も「タンジブルなものへの愛着はある。あらゆるものがデジタル上で表現される時代において、匂いや触覚といった行為は、人間が持っている五感としていまだ特別な感覚。だからこそ、価値として残っていく可能性が高い。VRなどの仮想空間で表現できるものが増えれば増えるほど、現実世界で体験する行為の価値は高まるかもしれない」と語る。

 VRでも、現在は視覚を中心とした表現が多いが、今後はオーディオ分野と連携しより臨場感のあるオーディオ環境を構築することも可能性がある。現実世界と仮想世界の違いを理解しつつも、仮想世界で表現できる方法の幅が広がることで、より現実世界との距離は近くなってくる。しかし、仮想世界と現実世界との区別がつかなくなる危険性もある。Jayse氏は仮想世界と現実世界との差別化をうまく図りながら、人が意識して選択できるための環境をつくりたい、と話す。

 最後に、Jayse氏はVRの登場によってデジタルの表現に3Dなど奥行きが生まれたことによって、新たなUIの可能性があると指摘。

 「仮想空間において3D化された物体によってユーザーそれぞれが違ったUIを見るような表現もあるかもしれない。ユーザーそれぞれの立場で違った経験がある、シェアードエクスペリエンスとも言えるような体験をどうデザイナーはデザインするか。表現の幅の広がりとともに、ユーザ体験自体も新たな視点を持って設計しなければいけない」と語った。

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