logo
GitHub Universe

GitHubで進化するオープンデータ--ソーシャルコーディングの世界

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 オープンソースソフトウェア開発のプラットフォームサービスとして人気のGitHubが開催した初のユーザーデベロッパーカンファレンス「GitHub Universe」。2日目は初日と変わってオープンガバメントや非営利組織、個人での活用事例に焦点を当て、GitHubが掲げてきた“ソーシャルコーディング”が、社会をさまざまな角度から変革しつつあることを知らしめた。

 2日間にわたるカンファレンスの初日は、主にソフトウェア開発に焦点が当てられ、GitHubの新旧機能や強力なパートナシップ、それらを活用する大企業の事例などが紹介された。2日目はGitHubを公共事業の運営や行政のオープンデータ、社会企業組織の運営などで、開発バージョン管理システムVCS(Version Control System)としてのGitHubとは異なる使い方をしている事例が紹介された。

  • キーノートに登壇したGitHubのNicole Sanchez氏は2015年5月からVP of Social Impactに就任しており、同社が社会問題解決に力を入れようとしていることが伺える。

 2日目のキーノートに登壇したテクノロジーによる社会問題の解決に取り組むSocial Inmapctの部署で副社長を務めるGitHubのNicole Sanchez氏は、「今日はこの会場で紹介する、あなたの会社や社会をより良くするためのさまざまな方法をぜひあなた自身で実行してほしい」と語り、そのモデルとなるGitHubを活用して成功している社会プロジェクトを紹介した。

 米国内では貧困のため水道料金が払えない家庭が3500万世帯もあり、多くはシングルマザーで十分に収入が得られないなど社会的な問題を抱えている。Detroit Water Projectはデトロイト市とバルティモア市で、市が公開しているデータから貧困の理由を分析した上で寄付を募ったところ、23万ドル以上が集まり、900以上の家族を助けられたとしている。創設者のTiffani Ashley Bell氏は「ただ寄付金を集めるだけでなく、データサイエンスの手法を活用することで状況に関心を持ち、継続した活動にもつながる」と説明。さらに「データをハックして社会を変革するボランティアを我々は求めている」というメッセージを会場に送った。

 子供が家でインターネットを使える環境を提供し、デジタル格差を減らす活動を行うConnectHomeでは、地域コミュニティと提携してネットワーク接続を支援するのと合わせて、GitHubを使ったコード教育も提供している。コードを学ぶことは進学や就職面で有利になり、地域を支える人材にもなるという考え方は、米国ではここ数年で認知されるようになり、高校へも拡げようとする動きが始まっている。

  • Detroit Water Projectの創設者Tiffani Ashley Bell氏は「ハック精神のあるボランティアが社会では求められている」と会場にいるエンジニア達へメッセージを送った。

  • 全米ではティーンの7割は毎日インターネットで宿題をしているが、4軒に1軒が家庭にインターネットが無く、デジタル格差がさらなる社会格差を生み出す問題にりつつある。

 こうした非営利組織や社会企業家はもちろん、行政でもGitHubを活用する動きは拡がっている。オープンガバメントやオープンデータの流れが世界に拡がるなか、公開したデータの管理ができ、フィードバックやプルリクエストを使って利用者とコミュニケーションができ、さらに、セキュリティと使いやすさの両方を備えている上に無料で使えるGitHubが活用されるのは当然の流れだと言える。

  • オープンデータの具体的な活用事例を紹介するプログラム「Changing Lives with Open Data」では、日本から国土地理院の事例が紹介された。Univerese全体の中で海外の事例が紹介されるケースはめずらしい。

  • 公開されたデータを元に3Dプリンターで出力したジオラマや地図を見せて様々な使い方ができることを説明する国土地理院の藤村英範氏。

 実は日本でも神戸市や和歌山県がオープンデータの公開にGutHubを活用するなどの事例ができつつある。中でも国土地理院では早くから地図データの公開にGitHubを活用しており、プログラム「Changing Lives with Open Data」ではロサンゼルス市らと並ぶ注目事例の一つとして発表を行っている。

 登壇した国土地理院情報普及課の藤村英範氏によると、国土地理院では2003年から加工可能な地理情報システム(GIS)をオープンデータとして公開しており、特に災害時の救助や復旧活動にデータが使われ、通常の利用時の4倍にもなるという。ヘリやドローンを使った写真や動画データも収集しており、動画は一部YouTubeでも公開されている。ただし、地図データ単体では意味が無く、どう見せるかというデータビジュアライゼーションやインフォグラフィックスの手法を合せて情報価値を高める必要がある。オープンデータにする理由は、そうした加工や公開のアイデアをコラボレーションする相手を増やすためでもあり、東日本大震災では外部と協力してアーカイブを構築するなどしている。

 ただ数字の羅列を公開するだけではデータとして意味が無いという話は、ロサンゼルス市からも聞かれた。以前に市のオープンデータの活用促進を担当していたことがあるAbhi Nemani氏は、公開データはたくさんあったものの数字しかわからなかったのでほとんど活用されなかったが、一部をグラフ化したりマッピングデータに置き換えたところ、必要性が認知されるようになったと話す。また、政府ではまだ紙とペンを使うのが主流で、データも印刷物をOCRにかけてPDF化するだけで公開したと思っているところも少なくないという。

 2日目は社会活動以外にも、ウェブデザインの制作や雑誌の編集などでもGitHubが使えることが紹介されており、オープンデータ以外にもGitHubを活用する新しいアイデアは次から次へと生まれていて、単なるハブから宇宙のような拡がりを見せていることがわかる。合わせて、GitHubが持つ機能を生かしたツールやアプリを開発する方法の解説や、基本的な運用方法を説明するプログラムもあり、ユーザーもまた幅広いことがわかる。

  • ロサンゼルス市で働いていたAbhi Nemani氏は、データはたくさん公開されていたがただタイトルを並べるだけだったため誰にも関心を持たれなかったが、データをわかりやすく加工して見せることで状況を変えられたと説明する。

  • 2日目はテクニカルな内容よりもソーシャルに関する話題が多く、またスピーカーも女性が多かったせいか、前日に比べて参加者の女性比率がかなり高くなっていた。

-PR-企画特集